夢二(1991)SEIJUN RETURNS in 4K
夢二(1991、荒戸源次郎事務所、128分)
●監督:鈴木清順
●出演:沢田研二、毬谷友子、宮崎萬純、広田玲央名、宮城千賀子、長谷川和彦、麿赤児、余貴美子、原田芳雄、大楠道代、坂東玉三郎
浪漫三部作の第三弾で主人公は竹久夢二、沢田研二が演じる。
まず夢二が毎晩悩まされている夢の映像で映画は始まる。
祭りの日、紙風船、木の上の女の後ろ姿、金髪の男に銃で撃たれる。
そして夢から覚める。
夢二の着ていた着物は夢のシーン、現実のシーンともに全く同じものだ。
なので夢から現実への移行などなく、同一のフェーズで進行していると解釈することも(しようと思えば)できるような作りになっている。
こんなふうに最初から最後まで夢なのか現実なのかハッキリした区別を判断できる確信も持てないまま映画は進み、終わる。
夢二が駆け落ちの約束をした恋人、彦乃(宮崎萬純)と待ち合わせの場所・金沢へ横浜から一人で向かうがこの時金沢への移動シーンはなく、駅弁の包み紙を縦に並べて表現している。
そこで殺された夫が浮かんでくるのを湖のボートで待っているという女、脇屋巴代(毬谷友子)と出会う。
彼女を見て芸術欲と性欲にかられ、関係を重ねていく夢二。そこへ彦乃の使いでモデルのお葉(広田玲央名)が登場。
夢二に相手にされないお葉は宵待草というカフェで働き出し、そこにいたのが殺されたという巴代の夫、脇屋宗吉(原田芳雄)であった。。と、そんな感じのあらすじ。
スタンダードだった『ツィゴイネルワイゼン』、『陽炎座』と変わって、今作はビスタサイズになっている。
そのためなのか、清順監督の特徴の一つと言える、カメラの横移動が頻繁に繰り返される。
『陽炎座』にあった情念のようなものはなく、どちらかというと夢二の持つあっけらかんとした陽性の雰囲気に包まれている。
ホドロフスキーの『リアリティのダンス』を観た時にも感じたことだが、ストーリーが最初にあってそれを表現するためにショットを繋ぐということではなく、まず撮りたいショットがあってそれを成立させるためにストーリーを後付けしていくような映画に思える。
なのでどのショットを静止画で切り取ってもとても様になる(IMDb参照)。
映画の中盤くらいで、夢二が女将(大楠道代)と窓の外を見ながら、いつかこうして女将と一緒にいたような気がする、と語りかけると「いつかどこかで見た景色ってあるもんやろね」と女将は返す。
花嫁行列を見た気がすると続ける夢二に対して、きっとあったんでございましょう。金沢であってもどこかよその場所であっても。先生のおつもり次第ですと答える。
事実として実際に起こったかどうかよりも、起こったのであろうという感触さえ自分の内に存在すれば真実である、と、まるで清順監督自身の創作姿勢を表明しているように聞こえた。
それが誰でもない、浪漫三部作すべてに出演している大楠道代の台詞であるがゆえに、意義深い。
もう少し書きたいことがあったような気がするが、うまく言葉にすることができない。
ワ印とか帝展とか知らない美術用語(?)を知れた。
牛の血が流れた池の色は恐ろしくも美しかった。
真っ赤な紅葉をバックに登場する稲村御舟(坂東玉三郎)は美しかった。
背を向いて片肌脱ぐ巴代は妖艶で色っぽかった。
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