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トラブルメーカー・その2

こちらは続編になります。

からの続きになります。



某企業のオフィスビルの警備隊は約20名の隊員が配属されています。
その内2名は非正規で、後は僕を含めてみな正社員。

非正規は、中途採用で正社員雇用予定の契約社員の男性1名とパートの女性1名。
依頼主側の要望としては、業務内容によっては企業内の機密事項や重要事項に関わる業務もある事から、正社員のみを配属させて欲しいとの事だったんですが
うちの会社の方で人手が足りず、交渉の上で臨時的にパートが入っています。

アルバイトやパートなどの非正規雇用だからといって信用がない、という事ではありませんが
残念ながら現在の日本では、雇用形態によって社会的信用の度合いに差があるのは事実だと思います。

非正規雇用だからといって仕事がいい加減という訳ではないですし
必ずしも人間性に問題があるとか信用できない人という訳でもないです。
でも、世の中はそんな風に見てくれないのもまた事実です。

それは仕方ない事ではないかと。

契約社員の方は、試用期間終了後には正社員登用になる予定なのでそちらは問題はありませんが
パートの方は、家庭の事情があって正社員で働く事が難しい為、正社員になる予定はありません。

配属先の要望もあり、正社員が新たに入社してきた場合はそちらを優先的に人員補充しますので、
その時は本人の能力や勤務態度などを考慮の上、場合によっては配置を外れてもらう可能性があるようです。
その旨は、パート本人にも伝えてあります。

ただ、このパートの女性が、実に厄介。
社会人としてのリテラシーに欠けているなと感じる点が度々あります。
とにかく社会人基礎力が最低水準に達していない。
彼女の経歴から推測すると致し方ないのかもしれませんが
いくら深刻な人手不足だから、アルバイト・パートだからといっても、会社ももうちょっと人を見て採用して欲しいです。

彼女は奈美さんという、40代の人で

専門学校を卒業してから20代の頃は家事手伝いをしていて、ときどき単発のアルバイトをしたりして暮らしていて
その後に結婚。
結婚後は専業主婦、そして2年ほど前に離婚。2人の子供を抱えたシングルマザーという経歴。
子供は上の子が高校に入ったばかりで下の子は中学に入ったばかり。

仕事らしい仕事はここの警備会社が初めてとの事でした。

はい。
ハッキリ言って地雷案件です。

入ってから1年半もたつのに仕事を全然覚えないんです。
1年半も経つのに、新人に毛が生えた程度の能力だから、他の隊員が彼女のフォローに回り、彼らの本来の業務に支障が出やすくなります。

そんなだから同じミスを平気で何度も繰り返す。
ミスをしても一切反省はしない。
口では「すみませんでした」「今度から気をつけます」とはいうものの、
同じミスを繰り返した時に班長のさくらさんから

「それ、この間も同じ事をやりましたね?今回で3度目ですね。どうしたら同じミスをしなくなるか一緒に考えてみましょう」

みたいに注意指導されると、その場では一応謝罪の言葉は述べ、さくらさんに従うものの
さくらさんのいない所で、他の班長や一般隊員に

「さくらさんってアタシが前にやったミスを何回も蒸し返してネチネチ言うからホント嫌んなる。過ぎた事を言っても、やっちゃった事なんだから仕方ないじゃん」

と愚痴を言う。
愚痴に付き合わされるのは、主に一般隊員の女性警備員達なんですが
彼女達もいつも奈美さんのミスの尻拭いをさせられた上でそんな愚痴に付き合わされるのだから
不満が溜まっています。

なので時々、女性警備員達はさくらさんや僕に相談に来るのですが
さくらさんは
「彼女にキツく注意する事は簡単だけど、このご時世だからあまりキツく言い過ぎてパワハラだのなんだのと騒ぎになるのは困るのよね。
それに、キツく注意したからといって彼女の性格を考えると、改善するかしら?というのが本音なのね。
だからといってこのままにしておくと女性隊員達の不満やストレスは溜まる一方だし…本当に頭が痛いわ…」
と、週次会議の時にぽろっと僕に漏らしました。

奈美さんはそんなさくらさんの心中などお構いなしに、傍若無人に業務に当たる。
そしてその日もまた同じミスをやらかしては「てへぺろ」で済ませる。

たまりかねて僕が
「同じミスをしない為にはどうしたらいいか考えよう、って言われてる事ですし、一度真剣に考えてみてはどうですか?」
と促すと

「やっちゃった事なんだから仕方ないじゃん。それに大事になって上(依頼主側の総務部)にまで話が行ってないんだから別にいいでしょ?警備の中で内々で済ませているんだから大丈夫なんでしょ?」
と、呆れ返るような返答。

「その、内々で済ませるために他の隊員や班長、隊長が骨を折ってる事については何も思わないんですか?」
と聞いても

「だってみんな社員なんだから仕方ないじゃん。社員がバイトとかパートのミスのフォローをするのは当たり前の事なんじゃない?アタシの姉は◯◯(某ファミレス)の昼のパートやってるけど、社員はパートのフォローをするのが仕事なんだから、パートはそこまで仕事に責任持たなくていいって言ってたよ」
と、ケンカ腰で語調がだんだん荒くなってきました。

僕はその場では何とも言えず、さくらさんや他の班長に情報共有をした上で
隊長と副隊長に報告をしました。

余談ですが、僕がそれ以上何も言わずに
「そうですか、わかりました」と締めた時に

「フンっ、アタシの勝ちだね!言い負かしてやった!」と言わんばかりに彼女が勝ち誇ったようなドヤ顔をしていたのには本気で腹が立ちましたが、
そこはグッと堪えて我慢です。

その場でそれ以上言っても揉めごとになるだけですから、無駄に騒ぎを大きくしたくないとも思いまして。

だからといって放置しておく訳にはいかないんです。
彼女はミスばかりでまともに仕事ができず
彼女が何かしらミスをしたり、覚えてない(と言っても何度も教えてますが)仕事を振られる度に、他の隊員がそのフォローに回ったり
最悪の場合は社員に丸投げして自分は知らん顔を決め込むものだから
交代時間が遅れたり、休憩に入らなければならない隊員が休憩時間を削ってフォローしたり、という事になるので
仕事が回らなくなるんです。

その度に指導をしても、やっぱり覚えないというか覚える気がないから一向に仕事は覚えないし、同じミスを繰り返す毎日。

それに対して感謝や謝罪の言葉もなく、ミスをしても社員が尻拭いしてくれるからまぁいっかあー、
わからない事は社員にやらせればいい、みたいな態度も相変わらず。

それでいて同僚はもちろん、依頼主側の社員や来客、搬入業者、清掃員や設備員などに対しても横柄な態度を取るので、心象はかなり悪いです。
そのくせ他人の態度が少し感じ悪かったりするとすぐに文句を言って愚痴る。
「アタシが挨拶してんのにアイツ無視してくんだよ?どう思う?」
なんて聞かれますけど
「気持ちはわかりますが、それでも平常心で粛々と自分の仕事をしましょう」
と諭しても、舌打ちしてブツブツ文句を言うような奴です。


口の聞き方もとにかくヤバい。
お前は元ヤンか?!みたいな口調で応対するんで、常にヒヤヒヤものです。
「相手はお客様なんだから、もっと丁寧な言葉遣いでお願いしますね」
と言っても「はぁ?」な態度。


彼女の素行の悪さはそればかりではないです。


いきなり金髪に近い髪色に染めて出勤してくる(40代です)
そして、派手なピアスをジャラジャラさせて出勤してくる
服装も派手で、奇抜な色の服装というか、ビジネスシーンにそぐわない服装で出勤してくるから、依頼主側の社員達からもギョッとして二度見される事もしばしば。
厚底スニーカーの韓国女子みたいなファッションが好きらしいけど、オフィスビルなんで、その服装は悪目立ちします。

服装に関しては彼女なりの何かしらの自己主張らしいんですが、そんなものは仕事と関係ない場所でやってくれと隊長から注意をされても改善されません。

「就業規則にもあるけど、通勤時はスーツなどのビジネスシーンに沿った服装が基本です。女性の場合はビジネスカジュアルやオフィスカジュアルまでなら許可しますが、奈美さんの服装はオフィスカジュアルではなく、カジュアルな普段着です。色づかいも派手ですし、ヒョウ柄のマフラーとジーパンにスニーカーというのも通勤にはやめた方がいいです。
仕事外なら好きな服を着ればいいですが、仕事場に来るのであれば服装管理はきちんとするように。
新任教育の時に通勤時は男女共にスーツが義務だと教えられませんでしたか?」
と、隊長から注意をされたんですが

「だって私これしか持ってないんで」

本当にこの人はあー言えばこー言うなんですよね。
隊長はそれには耳を貸さず
「それから、その髪色は完全にアウトです。ほぼ金髪じゃないてすか?うちでは規則で黒髪かダークブラウンまでとなっています。すぐに直してきて下さい。就業規則を守れない場合は業務から外れて貰います」

「でもぉ、ここの社員さん達(依頼主側の社員)は結構自由じゃないですかぁ?スニーカーにジーパンの人もいますよぉ?」

「それはここの会社の規定です。我々は◯◯株式会社(依頼主)の従業員ではなく◯◯警備の従業員です。
ですから◯◯警備の就業規則に従って下さい。それが守れないというならば、僕はさらに上の役職者に現状を報告してあなたの今後の処遇を検討しなければならなくなります。
服装規定についてわからない事があればさくらさんに教えて貰って下さい。」

隊長は有無を言わせぬムードで締め括る。


続きます



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