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トラブルメーカー

僕は現在、機械警備の機動隊員をしていますが、時々工場とオフィスビルの常駐警備の応援に駆り出される事があります。

本来の所属は機械警備の機動隊なんですが、なんせ人手不足だもんで
工場とオフィスビルに行かされる頻度もかなり高めです。
というよりオフィスビルの仕事の合間に機械警備や工場の警備に行ってますから
どっちが本所属隊なのかわからない状況です。

特にオフィスビルの方は離職率がやたら高くて
新人が入っても
早ければ2週間
持って3ヶ月、と、短いスパンで次々と辞めて行ってしまうんです。

そんなにキツい仕事なのかと言うと
オフィスビルの警備はかなり楽です。

まず、立ち仕事がほとんどありません。

以前は正面玄関での立哨警備や駐車場入口の出入管理業務は入口付近での立哨、というのががありましたが
依頼主の意向で、正面玄関はモニター監視に切替わり
受付スタッフのみが常にカウンターに座っています。

駐車場入口の業務は、新たに自動ボラードを設置したので、駐車場管理室でのモニターを監視が基本となり、こちらも管理室で座りっぱなしです。

あとは防災センター勤務と通用口の管理室のポストがありますが
いずれもモニター監視と出入管理が主体なので
立ち仕事はありません。

依頼主側の意向で
「肉体的・精神的に苦痛を伴う業務や、時代にそぐわない精神性に基づいた業務などは作業効率を著しく低下させる要因となるのでできる限り排除するよう努めてほしい」
との事で
立ち仕事がなくなりました。

肉体労働と言えるのは巡回のみですが
これは
夕方の定時に合わせて閉館業務を兼ねた閉館巡回
その後は残留者確認の為の巡回
深夜帯の細密巡回
細密の後は原則、朝まで巡回業務はありませんが
必要に応じて臨時巡回を行う時もあります。

朝になってからは開館作業を兼ねた開館巡回くらいなので
肉体的にはかなり楽です。

それ以外の時間は防災センターと通用口のみの配置です。


他の現場と比べたら天国か?!ってくらい
肉体的にはかなり楽です。

そもそもオフィスビルの常駐警備そのものが施設警備の中でもかなり楽な部類になると思いますがここの現場はその中でもメチャクチャ楽な方です。

しかもうちの場合は、オフィスビルの常駐警備は単価が高いので特別手当もつき、ほかの隊と比べて給料も高いから(ひと月に数千円〜5万ほど高くなる)
異動希望者も多く、人気の現場です。


そしてここの依頼主の会社の重役さん達は
「気合い」「根性」みたいなノリが嫌いな人が多い様で
というより、今はそんな時代ではないんだからそういう精神で経営していくのは時代錯誤というお考えなのだと思います。

現に依頼主の企業はコンプライアンス意識が非常に高くて
プライバシーポリシーやハラスメントに対して非常に厳しいと思います。

それと同時に僕らの警備会社に対しても
依頼主側の企業が行う、コンプライアンス教育を毎月受ける事を条件に契約をしています。
コンプライアンス教育というのは、依頼主側の企業では月に一度社員を対象に行なっているものだそうで
そちらの企業様のポリシーに沿った警備業務を行なってほしいという要望に基づいて行われています。

…要するに自社の従業員にブラックな労働を強いるような悪質な企業にうちの会社の警備は頼みたくないんですよ、という本音があるんだと思います。
(それ言ったらほとんどの警備会社に依頼できなくなると思うけど)

なので、他の現場と比べるとホワイト度が高めの現場になっていると思います。

ここまで書くとなぜ離職率が高いのか不思議に思われると思います。

労働条件は警備の仕事の中では圧倒的に高待遇と言えます。

原因として考えられるのは…やっぱり人間関係なんだと思います。
というかそれしかないです。

しかも、退職したり
「今よりキツい現場になっても良いから異動させて下さい」と異動願を出すのは、女性警備員ばかり。

原因として考えられるのは
副隊長の猪瀬さん(40代)

彼は女性警備員に対するセクハラをしている疑いがあり、
新卒の若い女性警備員にはひわいな言葉で性的羞恥心を侵害したり
場合によってはデートの強要をしたりなどをしていたようです。

それから、30代以降の女性警備員には「おばさん」呼ばわりをして不快にさせたり

女性の身体的特徴を揶揄ったり(「ブス」「デブ」「胸が小さい」「胸が大きい」など)

職場に成人向けの雑誌やDVDを持ち込んで、休憩室に置いておいたりなどという行為がありました。

現場の責任者である隊長や現場担当の主任、課長、もっと行くと部長クラスからも戒告、譴責処分などを受けているけど、一向に態度が改まる事はありませんでした。

ですが、懲戒処分が段階的に重くなり
ついには降格処分になって他の現場に飛ばされました。
つまり、副隊長というポジションが剥奪されて、ヒラの隊員になったわけですが
それでも異動先の現場でも女性警備員に対してセクハラを続け、一向に改善しないので
最終的には諭旨解雇になりました。

彼が去った後に来た副隊長は、同じ40代ですが
品行方正で尚且つ温厚で優しい人なので
その方面でのトラブルは去ったはずなんですが
やっぱり女性警備員の退職は続いていました。

ここのオフィスビルの現場では週に一度
班長以上の役職者のみで行う、週次会議がありますが
僕は班長なので、この会議には出席しています。

隊長、副隊長、班長4名の総勢6名で週次報告などを行い、業務についてさまざまな事を協議するんですが
駐車場警備班、防災センター業務班、巡回警備班、女性警備隊、それぞれの1週間の業務報告から始まり、さまざまな事をやります。

そして
とある日の週次会議では、女性警備員の定着率の悪さが議題となりました。

班長の中には1名、女性班長のさくらさんがいます。
彼女は女性隊の班長なので、その事についてひどく責任を感じているらしく
常に頭が痛い思いをしているのは、僕にも伝わって来ます。


長くなるので、続きます。




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