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詩 節分

                     Ⅰ

    幼年時
私の中に棲む鬼は
寂しがりやでありました

    少年時
私の中に棲む鬼は
一人が好きなやうでありました

    十三―十四
私の中に棲む鬼は
周囲の圧に潰されました

    十五―十八
私の中に棲む鬼は
ひたすらに死を恐れてました

    十九―二十
私の中に棲む鬼は
酷い悪霊と見えました

    二十一
私の中に棲む鬼は
姿を見せなくなりました……

                     Ⅱ

私の中に棲む鬼は
ただ静かに待っています
空調動く音もして
凍るみ空のしらむ頃

私の中に棲む鬼は
いとなよびかになつかしく
手を差伸べておりました

私の中に棲む鬼は
消えゆく中でただ嘆く
肉塊のやうでありました

私の中に棲む鬼に
いとねんごろに感謝して、ただ無為に
長生きするのを覚悟しました

私の中に棲む鬼は
いと安らかでありました


中原中也「生ひ立ちの歌」のパロディオマージュです。前半では私自身の若い頃を振り返りましたが、後半部分は単純に魘夢たんについて歌いました(言わなくていい)。


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