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ラーメン部骨伝導――部員紹介

骨伝導イヤホンでラーメンを啜る音を聞きながら行列を待つ。これがラーメン部骨伝導の活動である。

それなのに此奴らと来たらッ!

行列の待ち時間に恋愛小説を読むな!いや、百歩譲ってそれは許すとしよう。問題はもう一人の方だ。

「君みたいな可愛い子が、こんなラーメン屋に来るなんて意外だね」
「あたし、こう見えて凄く食べるんです」

行列のすぐ後ろの女を口説くとは何事か!これまで数え切れぬほどラーメン屋の行列に並んできたが、貴様のような輩はついぞ見たことがなしッ!

女の方も女の方だ。眉目秀麗な外見に惑わされ、見知らぬ男と打ち解けるなど恥を知れ!

「あの、ちょっといいですか?実は、あたしもその小説の好きなんです」

「これかあ?主人公の芯の強さが良いよなあ」

「そうですよね!その女の子に憧れちゃいますよね!」

「ま、不細工な俺にゃ縁のねえ話だなあ」

「そんな、見た目なんて気にする子じゃないですよ」

気づけば、わたくし一人だけが会話から取り残されていた。


(410字)
タイトルは、たらはかに(田原にか)さまの企画からお借りしました。この企画に参加している「ラーメン部骨伝導――その理念」から、溢れた分のストーリーです。

独立したショートショートとして完結している作品ですが、連載小説の一部でもあります。連載小説としての側面に興味を持たれた方は、こちらのマガジンをチェックしてみてください!

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