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短歌 村雨礼二

間抜まぬけめと ののしきみの うつる いとおぞましき 景色けしきをば

この短歌では、田中一行先生の漫画『ジャンケットバンク』に登場する村雨医師(本名:村雨礼二、職業:医者、自称ギャンブラーではないのに賭場で大金を稼ぐ、永遠の28歳)を詠みました。

この漫画、ジャンケットバンクは所謂デスゲームもので、命懸けのギャンブルが繰り広げられます。村雨医師も、最初は敵キャラとして登場したので、主人公に負けて死にかけます。

ギャンブルで競われるゲームは、基本的にババ抜きを少し複雑したようなルール。なので勝負は、いかに相手の表情を読んでババを回避し、相手を騙してババを引かせるか、が問題となります。

そういう騙し合いが基本のゲームの中で、村雨医師は対戦相手をマヌケ、マヌケと罵ります。対戦相手が騙されることを前提にマヌケと言い、実際に騙された時もマヌケと罵ります。あまりにもマヌケと連発するので、村雨医師の「マヌケ」発言を数えて発表する人がTwitter上に現れるほどです。

ところで、「間抜け」という言葉は、認識不足や注意不足を責める際に用いる言葉です。なので、騙された相手を罵る状況にピタリとハマるのですが、自分と考え方が違う人に対する怒りを言語化するときにもピタリとハマります。

例えば、某塾の広告にて、こんな自分でも名門大学に合格しちゃったよ、とニッコリ笑っている高校3年生とかですね。家計の収入によって受けられる教育に生じる格差や、受けられた教育によって再生産される格差への問題意識が少しでもあれば、恥じ入りこそすれ、間抜け面で笑ってポスターに写ったりはしないでしょう。百歩譲って、「自分は塾の支援がなければ合格できなかった」と言っているのと同じ事なのですが、って、そろそろこの話は止めましょう。

まあ、人それぞれに、経験してきたことや注意を向ける対象が異なりますから、考え方の差異が生じるのも必然です。そう考えても受け流せない程にムカつくときに、「間抜け」という言葉を使えば相手の認識・注意不足への批判として怒りを言語化できます。

そういう理由で、私は村雨医師と彼の「マヌケ」という言葉が大好きです。村雨医師が見開き2ページいっぱいに描写された時なんか、わざわざヤングジャンプを買ってきて、そのページを切り取って、額縁に入れて、デスクの上に飾っているくらい大好きです。

そんな村雨医師ですが、第101話(2023年1月16日現在の最新話、単行本未収録)で、彼から見た世界は不条理に満ちていることが明らかになりました。一見すると美しい世界に覆い隠された、おぞましい光景を私も村雨医師のように見つめよう。今日の短歌の意味は、そんなところです。

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