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新刊を扱う書店と古書店の大きな違いとは

新刊を扱う書店と古書店の大きな違いとは。

それは新刊書店は出版されたばかりの新しい本を売る。古書店はいちど人が買って読まれた本を売る。その違いでしょう。

もちろん、それもあります。だけど、もっとほかの決定的な違いがあります。

それは、古書店のその一冊は、その一冊しかないということです。

新刊書店ならば、数冊の在庫があるかも知れません。ベストセラーが見込まれる本であれば数十冊の在庫があるかも知れません。また、店頭に在庫がなくなつても版元に注文することで絶版にならない限り在庫切れをなくすことができます。

しかし、古書店は、多少のダブリで在庫を持っていたとしても、その一冊が売れてしまえば、新たに同じ本を仕入れない限りそれと同じ本を売ることはできないのです。その一冊が貴重な一冊だとしたら、それはさらに難しいことになります。

ネット古書店である私の店の売り込み方法は100パーセントSNSです。インスタグラムとツイッターを使って入荷する書籍に対し一冊づつキャプションを書いて投稿しています。買ってくれるお客様もとうぜんそのSNSを見てくれた方ということになります。

SNSをはじめたばかりの私はフォロワー数というものが気になってしょうがなく、どうすればフォロワー数を増やせるのか、そんなことばかり考えていました。
フォロワーの数が売り上げ数と比例するとばかり考えていたのです。フォロワー数を増す、その近道はなんとなく自分でもわかっていました。それは、より多くの方をフォローするということです。

しかし、ある時、売れてしまった本に対しお客様から問い合わせがありました。

「あの本、ソールドアウトになってますが、もう入荷はないんですか? やはり、どうしてもほしいんです・・・」と。
私は「入荷しだい再入荷という形でお知らせします」と答えましたが、発刊から半世紀以上たっているものでなかなか仕入れが難しいのが本音です。

そんなことが数回続きました。やはり、古本といえど、古本のなかの人気作、古本にとってのベストセラーがあるようです。

そんなことから気づいたのは、古本屋にとって、フォロワー数が数千人、数万人いようと、その一冊の本を買って頂けるお客様はたったひとりだということです。

私はそれから、SNSで、むやみにフォロワー数を増やそうとすることをやめにしました。無意味なハッシュタグづけもやめました。

そして、それら本を気にいってくれそうな方、想像のなかのたった一人の方に向けて、その本の魅力を伝えるようにしました。
不思議なのは、この行為は、クラスで、学校で、そして、社会で同じような趣味、趣向、性格そんな気の合う仲間を探す行為と恐ろしく似ています。

まるで、生きづらい社会からはぐれて古書店をはじめた私が、同じような、性質を持つ人たちの群をさがすような。または、自分と同じようにはぐれた仲間を探すような・・・・。

新刊を扱う書店と古書店の大きな違いとは。
もしかしたら、古書店をやる魅了とは、その一冊しかない古書を売る、そんなことにあるのではないか、そして、そもそも古書店の魅力とは、そんな一冊しかない本を探しに行くこと、行けること。そんなふうに私は思うようになったのです。

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