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黒羽カラス
2023年8月12日 15:04
西日が窓から入り込む。六畳のワンルームがほんのりと色付いた。 長い黒髪の女性は窓辺近くで項垂れている。横座りのまま、三十分の時が過ぎようとしていた。「……出かけようかな」 その声には覇気がない。色褪せた畳の上を手が這うようにして伸びる。白いマスクを掴むと大きな溜息が漏れた。また動きが止まる。 夕闇が迫る頃、女性は勢いよく頭を上げた。長い髪を払い除けると清楚な顔が現れた。睫は長く綺麗な二重