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『プロジェクト・ヘイル・メアリー』 アンディ・ウィアー著 小野田 和子 訳 感想

近年の海外SF界において、『三体』と並ぶ傑作中の傑作と評判は拝見していましたし、アンディ・ウィアー氏の『火星の人』と『アルテミス』は読んでいたので、この作品も間違いなく面白いだろう、自分は夢中になって読むだろうと確信していましたが、なかなか手を付けられずにいました
理由として、文庫になった作品でないとなかなか購入しない上に電子書籍もほとんど利用していないので、コストがかかりますね、と購読を見送っていたのでした

しかし今年の夏に、早川書房の電子書籍50%オフのフェアに釣られ、電子書籍を本格的に利用するデビューを果たしたのです
電子書籍の良さがようやく分かりました
灯りがなくてもスマホで読めるし、かさ張らないし、本の群れの中に見失わない
困るのは、気に入った作品は紙媒体でも欲しくなるので結果、重複して買っちゃう事ですね
もちろんこの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』もそうです
素晴らしい、本当に素晴らしい!
どんなに期待値を上げられようと、それにびくともしない、骨太で強靭な物語の強さと面白さ、これが読めるしあわせを、しあわせを、しあわせを!
これでもかと受け取れる作品でした

この作品は、ごくごくシンプルに説明すると
太陽の出力が減少しつつあり、地球が氷河期の到来による滅びの危機を迎えているために、その解決法を探しに宇宙に旅立った科学者さんであり技術者さんの話です
使命を果たすために、試行錯誤し、様々な苦難を乗り越え宇宙を往くひとの話なのです
テーマは既出の近いモチーフの作品も多数ありますし、ある意味宇宙SFとしては定番のお話なのですが…
それでもこの作品にしかない魅力がいっぱいなのです
とても高度な宇宙での活動についての物理学の話も、医療、生化学、工学もあれやこれやとたくさんの話が盛り込まれてますが
書かれている事は高度でも、それがめっちゃ分かりやすく楽しく読めるのです
難しい内容を分かりやすく教えてくれる人の話を、たくさん聞く感じで読める話なんですね
読み終えた今、自分にそれらの知識が身に付いている訳ではないのですが、高度な学術の話が、物語のストーリーを楽しく読むためのさわりのところだけ、物語を読みながら自然に理解(した気分になれて)読める小説、といいましょうか
取り扱われている内容はゴリゴリのハード宇宙SFなんですが、読み心地はとってもライトな、エンターテイメント性に優れ過ぎた作品なのです
登場人物が宇宙に出かけてたり、無重力空間にいたり、ロケット燃料がどうのこうのという話を見たりするとアレルギー性鼻炎になるとか湿疹が出るとか、宇宙SF恐怖症とかでない限りは、わりとどんな方にもオススメしたい作品なのです
何より主人公の人柄が良いんですよね
頭脳明晰で性格は朗らかで、苦難に見舞われても挫けない強さとそれを笑い飛ばす明るさ、ユーモア感覚が小気味良くて、勉強熱心で勤勉で、アドリブが効いて本番に強い!
『火星の人』と『アルテミス』にも共通する、アンディ・ウィアーさんちの主人公の魅力が、この作品にも満ち溢れていました
読んでいてとても心地がよいし、読み終えてからの清々しい気持ちといったら格別なんです
なんか、仕事がんばろう! って気持ちになれるんですよね
彼らみたいには、なかなかなれないけど、自分の出来ること、やるべきこと、ちゃんとやろう! って(影響されやすくて恥ずかしいけど)思えてしまうんです

では、ここからは物語の内容を割るネタバレの記述をしますので、閲覧にはご注意ください


※ ここからネタバレのパートです
既読の方でないとまったく分かりにくい、感情的な感想を書いてます





この作品を語る上で、何より触れるべきこと
それはもちろん、ロッキーのことです
…彼の事を思って、ロッキーと入力するだけで自然と涙ぐんでしまうほど、彼やそのエピソードが愛おしくてたまらなくて、大好きです

主人公グレースは、太陽の出力の減少を食い止める方法を探すための探査機に乗っていましたが、同乗するクルー2名が共に死亡してしまい、たったひとりでいました
これまで、アンディ・ウィアー氏の著作を読んできた人間からすると『火星の人』でも『アルテミス』でも、孤軍奮闘する主人公という属性を知っていたので、グレースもそうなのだろうと思ってたんです

でも!
でも! そこにロッキーが現れたんですよね!
なんと『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は地球外生命体とのファーストコンタクトものだったのです
しかもそれだけじゃなくてグレースとロッキー(ロッキーはグレースが付けた名前)は互いに友好的に、少しずつコミュニケーションをとります
どちらも、故郷の惑星が属する恒星の力が弱まっているから、それを何とかするための解決法を探しに来たのだと分かったところ
そして、どちらも、同乗していたクルーを失ってひとりぼっちだったこと
姿かたちはまったく違うふたりが、お互いの状況に、深く心を痛めるところ…
それがあまりに刺さりすぎて、久々に本を読んでて泣きました 
同じ使命を抱いて宇宙を旅してきた、ひとりぼっち同士が出会えるなんて、素敵すぎる!
そしてふたりは、お互いの言語や知識や技術をどんどん理解しあって支え合う、最高で最強のバディになるのです
ロッキーがグレースに、この提案をするシーンがめちゃくちゃ好きなんですよ…

「きみがぼくの船にくるのか?」
「人間のテクノロジー、見たい、許される、質問?」
「イエス! 許される! 何が見たい?」
「何もかも!」
「イエス。こっちにきて見たいものをぜんぶ見てくれ!」

上巻ラストちかくのシーンより

それからふたりは、様々な問題や困難を乗り越えて、太陽の力を戻せるであろう方法を発見しますが、
それらももちろん、凄くスリリングで面白い展開でしたが
ふたりは別々に帰んなきゃいけないからヤダなあ~
ずっと一緒にいてほしいなあ~
あと、なんかトラブルがあってどっちかがどっちかをかばって死んじゃったり、
もしくはふたりで一緒に死んじゃったりしたら辛いなあ~(でも一緒ならちょっと萌えちゃうかも知れぬ)と、このバディが好きすぎてストーリーに集中してるのか上の空なのかよく分かんない感じになりました

そして、あのラストだったわけですが…
もう、大満足ですね🌞


この作品は名作で人気作だから、ちょいちょいあちこちで評判を目にしてました。しかし、
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』はファーストコンタクトものでかつ、バディものである! ってことは、決してどなたも漏らしていませんでした
唯一内容について触れてた文章は

「ロッキーがかわいい」 という内容だけです
この一言でこの作品をすべて語っていると言っても、過言ではありません

そして、Twitterやnoteの読書アカウントさん界隈の治安の良さとモラルの高さを実感した次第です

最後に、ちょうどこの物語を読んでいた最中に、noteの記事で拝見したこちらの曲が、あまりもロッキーとグレースのための曲に聞こえてまた泣いてしまったので、ここに引用させて頂きます
傘籤さん、ご紹介ありがとうございました

こちらが「ロッキーがかわいい」との談話を拝見した記事になります 執筆ありがとうございます

以上、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を読めてしあわせで、めちゃくちゃ感情論でしかない記事でした
 ロッキーは、かわいい! しあわせ! しあわせ! しあわせ!

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