10/11付 静岡家庭裁判所浜松支部の審判決定に対して抗議します。

静岡家庭裁判所浜松支部
裁判長裁判官 関口剛浩 殿
裁判官 木地寿恵 殿
裁判官 島田真人 殿

2023年(令和5年)10月17日
性同一性障害特例法を守る会

 10月11日付の性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に基づく性別の取扱いの変更申立事件(令和3年家第335号)の審判決定に対して、私たち性同一性障害特例法を守る会は、抗議いたします。

 私たち性同一性障害特例法を守る会は、男性→女性(MTF)とともに女性→男性(FTM)の者も複数名で活動しています。

 まず、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下、特例法)は、性別を変えるための法律ではありません。
 性同一性障害の診断があり、身体の違和が強く、やむなく手術をするしか生活できないとして性別適合手術を希望する者が、その手術後の生活をしやすくするための法律です。
そもそも戸籍上の性別を変えたいがために手術を強要されるわけではありません。手術を望まないが戸籍の性別は変更したい、というのは、当事者の立場からは本末転倒にうつります。

 この家事審判の原告は元が女性であり、報道によれば現在48歳です。性同一性障害の診断を受けており、普段は男性として生活をしていると主張しています。
性別適合手術は、本来、生殖腺を除去する必要があります。女性から男性への手術の場合には、子宮と卵巣を摘出しますが、身体の負担も男性から女性への手術より身体侵襲が大きく、大手術となります。それ故に手術を避けたいと思う当事者も少なくありません。
しかし、女性から男性への戸籍変更の実務上の運用で、女性生殖機能が機能しなくなる閉経後に手術を受けずに性別が変更となった前例があります。この場合、妊娠・出産が不可能となっているために、適合手術なしでも社会秩序の混乱をもたらすことがないため、認められたわけです。

 原告は、どうして数年待てなかったのでしょう?原告は性同一性障害の診断がおりた後も男性として生活をしており、数年待てば手術をせずとも性別変更の道はあったはずです。また、現在のパートナーとの結婚を考えての性別変更なのだとしたら、それは同性婚の実現を目指すべきであり、特例法を利用するのは筋違いでしょう。それらを待たずして自身の身体についての裁判を起こしたというのは、別の政治目的、いわゆる「セルフID」を実現するための布石であると思えてなりません。まるで、私たちの危惧する「男性器のある女性」や「妊娠出産をする男性」の出現のための裁判なのではないかと思えるほどなのです。
「手術なしで男になりたい」と望むFTMは女性に対する脅威にはなりませんが、「男性器があるままで女になりたい」というMTFは、女性にとって脅威となり得るのです。このような主張は「トロイの木馬」のようであり、もはやこの原告を「女の敵」と呼ぶ女性もいます。

 また、家事審判の場合、被告はいません。裁判所の判断ひとつで判決結審します。この原告は晴れて手術をせずに戸籍男性になれたと言うわけです。これが許されてもいいのでしょうか?
司法の暴走ではないでしょうか?
裁判所が「この人は可哀想だから、変えていいですよ」とお気持ちで判決を出したことにより、これが判例となり、ゆくゆくは男性から女性へ手術なく戸籍の変更ができるように拡大解釈がされてしまうことでしょう。
さらに言えば、審判書の11頁下から4行目には「医療界において、安易に性同一性障害の診断がされていることをうかがわせる証拠はない」との記載がありますが、たった1日で患者の発言そのままに性同一性障害の診断書を作成する、モラルを欠いた医師がいることが、当事者の間でも有名です。早稲田通り心のクリニック(http://kokoronoclinic.web.fc2.com/)において、私たちの会員でも実際に1日診断で取得できた例もあります。ジャーナリストが「自分は性同一性障害ではないか」と偽装し、診断書を取得できたという例もあります。(医師はどのように性同一性障害かどうかを診断しているのか聞いてみた / 診断書の発行「詐病を完全には見抜くことが出来ない」 | ガジェット通信 GetNews https://getnews.jp/archives/3445211

 最高裁の弁論を受けてこのような判決を出したのだとしたら、稚拙すぎます。ホルモン治療は4週間ほどでほぼ代謝排出されます。それを証拠に男性ホルモン注射を1ヶ月以上の間隔を空ければ生理が来ます。献血も4週間の間隔を空ければ、献血可能となるのです。
ホルモン治療は永続的に生殖能力がなくなるわけではありません。体型や外見への作用は不可逆的に進むかもしれませんが、生殖器への影響は、わずか1ヶ月ほどで元に戻ります。
北海道のFTMが妊娠出産のためにホルモン治療を停止し、実際に妊娠出産しました。これはホルモン治療が可逆的である証拠です。https://sitakke.jp/post/2613/
また同様に、MTFのトランスジェンダーが一時的にホルモン治療を停止し、パートナー女性との間にお子さんができたという話を当事者間の情報として聞いたこともあります。

 「女性から男性になるのだから、甘い基準でもいい」と裁判所が考えるのならば、それは国民、とくに女性たちの懸念にまったく答えていない判決です。
最高裁での手術要件の憲法判断を控える今、なし崩しの「制度変更」の地ならしに使おうとする政治的な意図を疑わせるような判決です。「裁判所の暴走」「裁判所の独断」と世論からの非難、社会と行政の混乱を裁判所は恐れないのでしょうか?
最高裁では「男性から女性」の側の審判です。この静岡家裁の判決を正当化する違憲判断が下されるようならば、「女性スペースを守ろう」とする女性たちの危機感が強まり、トランスジェンダーへの更なる攻撃の懸念もあります。まさに現在アメリカで燃え盛っているような「市民間の対立」や「文化戦争」が日本でも起きかねません。その導火線を、今まさに司法は握っているのだということを自覚してください。

以上

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