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小説:剣・弓・本013「隠者」
【セド】
陽の光が俺の瞼を叩く。眩しい。体をベッドに横たわらせたまま、目は窓外にやる。太陽がかなり高い。こりゃ昼だな。だいぶ眠っちまったらしい。
それにしてもライの生薬草は効くなー。何せ採れたてだもんな。どこでも売ってる乾燥薬草とは違う。包帯ももう要らねぇな。
ライ達の話し声が聞こえる。隣室にいるようだ。ベッドに横たわったまま寝たふりをして聞き耳を立てる。
ライ:「休息日としましょう。セドさんは全身包帯ぐるぐる巻きで寝込んでますし。
そこで今日は事実の整理をしてみようと思います」
ナスノ:「いいでしょう。ライ、続けてください。事実は真実の親戚。真実は美の幼なじみです。さあ美のほとりに今日は腰を下ろすとしましょうか」
ネネ:「……」
ライ:「僕たちの最終目的は『ダンジョン』の攻略です。そのための戦力増強として『静かの森』に針路をとりました。稀少鉱石ヴァイヒハイトを入手するためですね。武具の劇的強化を狙って。しかしそんなものはどこにも存在しませんでした。
事実はこうです。森の最深部にてオトスイを掃討した僕たちの前に隠者が現れました。彼の名こそ『ヴァイヒハイト』。彼の波術により、装備品が劇的に強化されました。つまりヴァイヒハイトなる稀少鉱石は存在せず、同名の波術士による武具の強化こそが本質だったのです。図鑑に載らないのも当然ですね」
ナスノ:「そして他の冒険者と遭遇しなかったのは、やはりオトスイの影響と考えていいですね」
ライ:「はい。そう捉えるのが妥当でしょう。それにしてもあの群れに対処できる冒険者がどれだけいるのでしょうか?」
ナスノ:「ライ、あの程度の試練は序の口ですよ。精神系と出会ってからが本番でしょう。その時にはあなたの知力が必要になります。セドの剣ではなく。あなたの知が」
ライ:「がんばります。でも、僕は非戦闘系です。セドさんのような確かな力があってこそですよ」
ナスノ:「謙遜ですね。いいですか、ライ。知は時に聖剣であり、時に邪剣です。知を正しく使う。それは才知あふれるあなたの使命ですよ」
ネネ:「……」
ライ:「あっ、はい。ありがとうございます。
さて、次にネネさんとセドさんの話題ですね。
結論だけを述べると、
・かつてセドさんは帝国の第2部隊に所属していた。
・ヴュートの村への侵攻時、部隊長ゲルステルはネネさんに手を出そうとした。
・それを見たセドさんはゲルステルの右手首を斬り落とし、ネネさんを救った。セドさんの良心が軍規を超えたということでしょう。
・上官への反逆罪により、一時投獄。
・第13部隊長に任命され、最初のミッションがここ。
という次第ですね」
ナスノ:「 ……そもそもの疑問なのですが、なぜセドは帝国に属しているのでしょう? 私の見立てではセドは光であり、美の存在です。後ろ暗い帝国になぜ加担しているのでしょうか?」
(つづく)
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