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【怪談】お化け屋敷
定期的にお世話になっているマッサージ屋さんがある。
夫婦でお店を営んでおり、その日は旦那さんが施術をしてくれた。
「最近、変な話。なんか不思議な体験とかそういう話を聞いてまわってるんですけど、旦那さんは何か体験したことないですか?」
「幽霊とかですか?僕は全然霊感とかないですからねー。でも小さい頃、何だったんかなー?って思うのはありますよ。」
旦那さんが小学校ぐらいの話なので、今から30年近く前の話だと思う。
お化け屋敷のたぐいがまったく怖くないような少年だったという。
ある日、親戚たちと数人でデパートに行くことになった。
今ではほとんど見なくなったが、当時のデパートでは屋上などでちょっとしたお化け屋敷が催されていることがあった。
旦那さんは乗り気ではなかったのだが、せっかくだしということで順番にそのお化け屋敷に入ることになった。
先に他のみんなが入り、自分は最後に入った。
わー!きゃー!と時折悲鳴が聞こえてくるが、彼には全然怖くなかった。
出口らしき扉が近づいてくる。
やっと終わりか、と息をもらした。
がしっ
ベニヤ板で作られた簡素な壁と壁の隙間。
誰かが手だけを出して彼の足首を掴んでいた。
子供だましだなぁと思った。
自分の足をひきよせ、その手をふりほどいた。
小さくため息をもらし、すこし歩くが、また掴まれる。
「もういいって!」
しつこく掴んでくる行為に気分を害した彼は、再びその手をふりほどき、出口を出た。
外ではみんながお化け屋敷の感想を言い合っており、出てきたばかりの彼にも感想を求めた。
「最後の足掴んでくるヤツ、めっちゃしつこかったわ」
みんなは眉をひそめ、目配せをする。
「そんなのあったけ?」「いや、しらん」
どうやら足を掴まれたのは旦那さんだけだったらしいのだが、その時は「変なの」と思ったぐらいで特に気にせず帰ったという。
「でもねー、大人になってから、やっぱり変だったなって思うようになったんですよ。お化け屋敷って基本的に人に直接触れたらダメじゃないですか?色々と問題になりますからね。やとしたら僕の足つかんできたのってなんだったんかなー?て。他の人は掴まれてなかったって言うし。」
世の中には不思議なことや分からないことがある。
今では、そう思うようになったそうです。
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