肩の上の巨人

肩の上の巨人

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憧れ

【1】 春先に大学のある町に越した時、入学までの期間に図書館に行った事がある。丘の中腹にあったため、自転車で行くにはかなりの勾配だった。大学在学中、町の図書館にはその一度行ったきりだった。 ただ、図書館へ向かう登り坂は更に先へと延びていて、その先へ行ってみたいと思った事は覚えている。壁のように聳えているその道に対して、単純にその先の景色が気になったという事もあった。「新しく来た町に蠢く日常」を垣間見たいという好奇心もあった。また、もしその先にお店があったら意外だな、楽しそう

    • 【赤黄色の金木犀/フジファブリック】感想

      1番好きなバンドの1番好きな曲。 必ずこの季節になると聴く。 郷愁を誘う歌詞だし、元々アコースティックなアレンジをする構想もあったらしい。 でも今の8ビートのバンドサウンドアレンジがバッチリハマってる。 クリーントーンのギターとロックオルガンの高音が澄んだ秋の空気感を感じさせるし、イントロのアルペジオが「日本の秋」過ぎて"たまらなくなって"しまう。 外国人から見たよそゆきの日本じゃなくて、平屋とか水たまりとか田んぼの中の畦道とか、灰色かったり茶色かったりする日本のノス

      • 思い出/アイスクリームシンドローム

        父方の実家は先祖代々の農家で、かなり大きな田んぼと畑を持っていた。そこに中2の夏に家族と帰省した時の話だ。 中学生の時には実家の据え置きパソコンから"世界と繋がっている"感覚を得ていた。 父の実家ではそんなパソコンも使えない上に広い田畑が世俗との繋がりを断ち、綺麗すぎる空気で窒息するような感覚だった。 まぁぶっちゃけ退屈だった。 その1週間前に部活のメンバー半分くらいの大所帯でポケモンの映画を観に行ってた。 その時の騒々しさとか雰囲気とかとあまりにも振れ幅があったのも

        • 『ネイティブダンサー/サカナクション』考

          思い出に立ち止まったまま 冬の花のよう この歌詞に共鳴できた時に、この曲の面白さは何倍にもなる様に思う。 冬の雪景色、きっと多くのものが白一色に染まり、生物の放つ彩りが失われている世界の中に、この歌詞の書き手はいる。 その中で咲く花は、寂しげで、儚げで、置いてけぼりで、 (周囲の景色との対比ではあるけど)とても美しい。 その"冬の花"は思い出の例えとして出てくる。 書き手の現実は面白みが無いのか、厳しい何かに直面しているのか、深い悲しみの中にいるのか、雪景色の中にいる