思い出/アイスクリームシンドローム

父方の実家は先祖代々の農家で、かなり大きな田んぼと畑を持っていた。そこに中2の夏に家族と帰省した時の話だ。

中学生の時には実家の据え置きパソコンから"世界と繋がっている"感覚を得ていた。

父の実家ではそんなパソコンも使えない上に広い田畑が世俗との繋がりを断ち、綺麗すぎる空気で窒息するような感覚だった。

まぁぶっちゃけ退屈だった。

その1週間前に部活のメンバー半分くらいの大所帯でポケモンの映画を観に行ってた。
その時の騒々しさとか雰囲気とかとあまりにも振れ幅があったのも大きかった。

父の実家2日目の朝。
やる事ないから早く寝た俺はめちゃんこ早起きした。朝5時くらいだったと思う。
布団から出てもやることが無いうえ、とんでもねえ田舎のバカデカ平屋は冷えまくるのでしばらく布団から出ないでいた。

しばらくすると、隣のおばあちゃんの部屋からテレビの音がした。聞こえてきたのはポケモンの朝番組だったけど、自分の住む関東とは放送時間が違うし、数週間遅れて放送されていた。何故数週間遅れているか分かったのかと言うと、観た覚えのある回だったからだ。当時放映されていたポケモンの映画主題歌をアーティストが来てライブする回。

向こうでその回を観た時は特に何も思わなかったのに。

あまりにも人の気配が無い田舎で自分以外の誰かがいる、でもただ隣の部屋にいるだけで直接会話をするわけでは無いという距離感。

田んぼに囲まれた夏の早朝という清々しい空気感と、曲の持つ伸びやかなサビの高音の親和性。

歌詞にあった「逃げ込んで入ったコンビニ」というフレーズが、「都会の生活の日常」という感じがして、片田舎に住んでいた自分には凄く良かった。当時の自分がインターネットを好きだった理由と一緒。
田舎にいる自分は部活のみんなといた日のことを思っていて、部活のみんなといた日には都会の生活のことを思っていて、歌詞の中の主人公は大切な誰かの事を思っている。という入れ子構造。

こういう事が重なって、その時からこの曲は今もずっと夏になると聴くし、夏が終わる頃にも聴く。

https://youtu.be/gIv09CqzZ68?si=tPPDZFxy6HYhuKL5

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