【新刊エッセイ】方丈貴恵|ホテル探偵 VS. 犯罪者たち
ホテル探偵 VS. 犯罪者たち
方丈貴恵
ホテル探偵―何とも心惹かれる響きを持つ言葉だと思いませんか?
『アミュレット・ホテル』では、犯罪者以外はご利用お断りという一癖も二癖もあるホテルで起きる難事件に、ホテル探偵の桐生が持ち前の推理力を武器に挑みます。
海外ではホテル専属探偵は実際に存在していて、日々ホテルの安全を守っているそうですが……私がフィクション上のホテル探偵と初めて出会ったのは、レイモンド・チャンドラーの「黄色いキング」でした。そして、ウィリアム・アイリッシュの「ただならぬ部屋」や、都筑道夫の『探偵は眠らない』を読むころには、ホテル専属探偵という設定の持つ魅力に完全にやられてしまっていました。
ちなみに、表題作にもなっている「アミュレット・ホテル」は私が長編デビュー後に初めて書いた短編です。
その依頼をいただいた時にまず私の頭に浮かんだのが、ホテル探偵でした(理由は単純明快で、前々から自分でもホテル専属探偵が活躍する話を書いてみたくて仕方がなくなっていたからです)。
幸いなことに、〝犯罪者御用達ホテル〟という特殊な場所と、そこを舞台にしたからこそ映える〝ホテル探偵〟という設定は、作者が想像していた以上に愉快でバラエティ豊かな化学反応を起こしてくれました。
また私は洋画、特にアクション映画に目がない人間でして、『アミュレット・ホテル』も、ある最高にクールなアクション映画にインスパイアを受け、その作品にオマージュを捧げたような内容になっています(何の映画かは、洋画好きの方なら、読めばすぐに察しがつくのではないでしょうか)。
舞台は日本なのにどことなく異国感の漂う……ユーモラスなのにハードで、ぶっ飛んだ本格ミステリに仕上がったと思います。お楽しみいただけますと幸いです。
《小説宝石 2023年8月号 掲載》
『アミュレット・ホテル』あらすじ
犯罪者の楽園〈アミュレット・ホテル〉のルールは2つだけ。①ホテルに損害を与えない②ホテルの敷地内で傷害・殺人事件を起こさない。そんな絶対的な掟が破られる時、ホテル探偵が独自の捜査で犯人を追い詰める。濃密なロジックで犯人を炙り出す本格ミステリ。
著者プロフィール
方丈貴恵 ほうじょう・きえ
1984年、兵庫県生まれ。京都大学卒。2019年、『時空旅行者の砂時計』で第29回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。著書に『孤島の来訪者』『名探偵に甘美なる死を』がある。
■ ■ ■
★ジャーロ編集部noteが、光文社 文芸編集部noteにアップデート!
ミステリーはもちろん、読書の楽しみが深まる記事を配信いたします。
お気軽にフォローしてみてください!
この記事が参加している募集
いただいたサポートは、新しい記事作りのために使用させていただきます!