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革、仕立てについて

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答え合わせ

答え合わせ

納品後もメンテナンスにお持ちくださるお客様が多く、ありがたく思っています。
使い手の色に染まった品物を見られるのはとても嬉しいですし、手入れしながら長く使い続けたいと思ってくださることは職人冥利に尽きる思いです。そういった理由からghoeでは遠方からのメンテナンスも送料のみのご負担で承っています。

一昨日は「つくってもらって本当に良かった。今こんな感じです」と、以前フルオーダーで製作したiPad

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茶利八方

茶利八方

茶利八方(チャリハッポウ)とは植物の渋で鞣された山羊の革「茶利革」に、
縦横斜めからの手揉み「八方揉み」を繰り返し行い、革の表面を隆起させることで深い凹凸を生ませた革。
日本独自の希少な革で、とても美しい革です。
多くの工程を人の手で行なっているため、技術を持った職人にしかつくる事ができないそうです。私が革を始めたときにはすでに途絶えてしまっていて「昔はこんなに凄い革があったのか」とずっと憧れを抱

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「革漉き」革の厚みを調整する

「革漉き」革の厚みを調整する

厚みのある革をスライスして薄くすることを「漉き(すき)」といいます。

革の厚みの調整はとても重要です。
例えば財布をつくるとして、表の革は全体に何ミリで、縫い目の手前からコバまでを更に薄く何ミリに斜めに漉いて、内側の革は何ミリでコバ付近は何ミリ、重なるパーツは何ミリ・・・と勘案します。
多数の革が重なる小物の場合、耐久性との兼ね合いもありますが、
「たくさん重なる部分だからそのままでは厚くなりす

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紙と鉛筆のススメ

紙と鉛筆のススメ

ghoeの設計図にはCADもイラレも使わない。
鉛筆で自由に線を描き、好きに消す。時折、革を曲げたり引っ張ったりしながら、実現可能な曲線を求める。
一筆書きの美しい線が引けたら儲けもの。この点でマウスやペンタブより手書きが強いと確信している。もしかしたらデジタル熟練者は同じことができるのかもしれないが、ぼくには紙と鉛筆が合っている。何の不便も無いし、全くの自由である。

たまに趣味でレザークラフト

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表面張力の美しさ

表面張力の美しさ

革はとても面白い素材で、「適切なストレスを与えると美しい膨らみを描く」という性質がある。ぼくが革で表現したいもののひとつだ。

ぐっと伸ばされてピンと張っている状態の、内側から外側への圧力を感じさせる緊張感。
それは例えば、競走馬の筋肉の迫力や幼児のほっぺたの可愛らしさであり、表面張力の美しさだ。

理想の膨らみは偶然には得られない。
要は「革に少しだけ無理をさせる」ということで、革の性格や品物と

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本藍染革の物語

本藍染革の物語

藍畑から始まり、スクモづくり、染め、藍染革が製品になるまで、全ての工程を映像に収めていただきました。

一年がかりの撮影。
藍師の新居さん、染師の古庄さんのインタビューでは、初めて聞くお話もあり勉強になりました。
お二人も、撮影してくださった仁木さんも、真摯で優しく格好良い大人です。
自分もこんな風に歳をとれたらいいな〜と思いながら撮影にお供させていただきました。
お三方の空気が感じられるという点

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続・コバ磨きについて

続・コバ磨きについて

前回の続き。
コバ(断面)の仕上がりは、革製品を愛する方々の間で特別な思いを持って語られます。
我々職人もどなたかの品物を拝見する際には、あくまで一要素ではありますが、必ず見る部分です。

ghoeでは塗り物を使わず、全て「磨き」で仕上げております。
革の上に樹脂を塗るのではなく、革そのものを磨くという方法です。
実際の作業の様子はこんな感じ。

裁断して、鉋(かんな)をかけた後の、
紙やすり→布

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革を磨く。革製品のコバ処理と経年変化

革を磨く。革製品のコバ処理と経年変化

コバとは?我々の言う「コバ 」とは革製品の断面を指す言葉で、
品物の印象を決定付けるのが「コバの処理」です。
コバ仕上げの美しさによって、品物の最終的なクオリティが決まります。

そのため、我々職人や革製品を愛する方々の間では、特別な思いを持って語られる部分でもあります。
革にあまり詳しくない方でもコバ仕上げの丁寧さを見るだけで、ある程度その品物の良し悪しがわかるかと思います。
今回はコバについて

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革を縫う。手縫いについて

革を縫う。手縫いについて

ghoeの製品は全て手縫いで仕立てております。
常連さんや日頃からご覧くださっている方はご承知のことと思いますが、初めてご来店の方に手縫いである事をお伝えすると、皆さん驚かれます。

ミシンに比べて手間のかかる縫製でありながら、手縫いにこだわるのは何故か。
手縫いのメリットとして「美しさ」「耐久性」そして「仕立ての自由度」があるからです。

同じパーツでも部位ごとに最適な力加減で糸締めできることで

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