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【詩】はじまりの歌 - 第四歌「今日は「何者でもない人たち」をうたおう」

「はじまりの歌」シリーズの4つめです。

はじまりの歌 - 第四歌

今日は「何者なにものでもない人たち」をうたおう
これは他人事ひとごとではなく、しかもはじまりにかかわっている

長い年月をかけて、この国では社会が崩れていったが、この変化の受け皿になったのが「何者でもない人たち」だった
一番はじめに変わっていった人たちだ

たとえば、
不登校──学校に行かない選択をした子どもたち
ひきこもり、ニート
一人旅、移住
フリーランス、独立起業
2つ3つの仕事のかけもち
非正規の働き方、ノマドワーク

さまざまな形で社会に認められる「ひとつの肩書かたがき」からはずれた人たち
ふるい文明の「身分のピラミッド」の底辺ていへんにいるか
身分自体がない人たち
──不肖ふしょう、この吟遊詩人K.ぎんゆうしじん けーも長い間、「何者でもない人」としてこの世界を彷徨さまよってきた

さて、何者でもなくなっていった人たちは
おそらく孤独に苦しんだ後で
社会を支える側に回っていくことも多かった
支えると言ってもえんの下の力持ち
どこでなにをしているのか、
その苦労も見えづらい

そうやって、福祉ふくしの仕事に
地域おこし協力隊に入り
見知らぬ土地へ移った人もだいぶいる
日常的なボランティアにいそしみ
ときに国際協力にたずさわり
船に乗り、自転車をこぐ
新しい事業に悩んだり
病にしたりもする
仲間を得て、パートナーを失い
家族のケアに力をくす人もあった

そんな中で、生と死のあいだにある支え合いを知った
身も心も使って知っていく

みんな、心当たりはないだろうか
SNSを見ていても、「そういえば、あの時のあの人は、今どうしているんだろう? いったい、何をしている人なんだろう?」とふしぎに思うようなことが…

“オメガのとき” を終わらせたのは彼ら、彼女ら、theyである。

* “they”はノンバイナリー(性別を男性/女性に固定しない人)の代名詞

さあ、何者でもない人たちのいく人かはすでに舟に乗って旅立った
別のいく人かはまだ身動きがとれない
いずれにしても、その人たちに光が当たり始めている
代わりに、ふる身分制みぶんせいは崩れようとしている

今、新しい表現が私たちをどうしようもなくり立てる
行こう、この先へ
希望の七月がまくを開ける

夕暮れのおかの上で
傷つき疲れてた人々は
海をなが
星の光が降るのを待っていた
無数の流れ星が、夜明け前に降りそそ
何者でもない人たちへ──


* 「はじまりの歌」シリーズは、この後「挿入歌」「第五歌」で完結する予定です。

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