【詩】はじまりの歌 - 第二歌 「何艘かの舟が行く。今から」
「はじまりの歌」シリーズ。第一歌の続きです。
何艘かの舟が行く
今から、これらの舟に乗り込んだ人たちを歌おう
先頭を行く舟の舵をとっているのは「話を聞く者」
あの人は誰の話にも耳を傾ける
みんなの気持ちがわかってくるから
力を合わせる工夫も生まれる
ていねいでおしゃべりが好きな性なのだ
舟の艫の方で天気を読んでいるのは「知恵のある男」
彼はもの静かだが、空を見て、波を知り
鳥の鳴き声をよく聞くことで
天気のよい方へ進む術を心得ている
あの「話を聞く者」も彼の知恵をたよりにしている
見てごらん、帆を立てる人を
あの人は「働き者」
とにかく体をうごかして
いつもなにかをやっている
うまくいくかどうかよりも
やってみることを大切にする
ベテランの船乗りだ
また、あの笑顔の人は「陽気な音楽家」
いつも楽しそうでよく歌う
その明るい歌は舟を束ね
みんなを元気づける
すると、いつでも心はお日さまの方に向く
こんな風にいろいろな仲間が
私たちの舟には乗っている
それぞれに力を合わせ
自分のペースを保ちながら
航海をしている
ほら、また新しい陸地が見えてきた
黒潮に乗って、島国の沖を行く
ところで、どうしてこのような舟旅がはじまったのか
なぜ、私たちは同じところにとどまって住むことをやめたのか
その話をしよう
今から十年以上も前のことだ
黒い大きなクジラが現れて
みずからを「オメガ」と名乗った
オメガはこの世界の終わりを宣告した
この時から「オメガの刻」が始まった
私たちは不安を覚え
島と大地は暗い雲に覆われるようになった
次はこの「オメガの刻」について歌おう
* 今回の詩は、今いる地域のコミュニティと、『一万年の旅路』というネイティブ・アメリカンの神話の本を参考にしてできました。第三歌に続きます。
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