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【詩】文明の壁

新しい文明の夜明けを見た
神々しくて、まだ言葉にならない
数は少ない人たちがもうここで生活を始めている
ついにここまで来た、と思った

今、壁の前に立っている
このおおきな壁の向こうにふるい文明がある
沢山の人たちがそこにいて
僕の大切な人たちもおおかたそこにいる

いずれはこの壁が崩れ、新しい文明が活気づくにちがいない
それまで待つのか

僕は胸のうずきを感じる
旧い文明をさけてここまで来た
できるかぎりシステムに関わりを持たないように
中央を迂回うかい
周縁の道をずっと歩いて来た
それでよかったのだろうか

あの人たちは、旧い文明の真ん中で手当てしているのか

私もこの壁を越えて
旧い文明の土地へ戻ろう
崩れかけたお城と渦を巻くまちのなかへ
新しい文明を言葉にした、詩と物語をたずさえて

西へ
夜明けの東から西へ
時を巻き戻すように
黄昏の方へ
旧い文明を知らないかぎり、新しい文明もわからないだろう
また西へ
旧い文明と新しい文明に橋を渡し
手に手をとって進みたい

今度、ここに立つ時はきっと一人じゃない



* 僕は「旧い文明」から、「新しい文明」が始まる場所へと旅をするように生きて来ました。日本で言えば、弥生時代に始まる、農耕社会で、定住し、ムラが強く、男性優位で、ヒエラルキーがあり、米もお金も蓄えが大事で、その蓄えは権力とともに中央に集められる。そういう旧い文明とは別の、新しい文明のあり方を探してきました。しかし、そのあり方が見えてきたとしても、それを言葉にして旧い文明に持ち帰れなければ、役に立てられません。だから、旧い文明へ戻ろうという詩です。

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