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女性アスリートの多様な「強さ」「美しさ」をともに魅せるビジュアルとは?

女子サッカーや女子野球など、女性アスリートの活躍する領域は時代とともに広がり、その活躍に注目が集まっています。

一方、性的な視点で撮影された女性アスリートたちの画像や映像が拡散し社会問題にも。アスリートとしての強さと、人としての美しさやその人らしさを、ともにビジュアルで表現するにはどうすればいいのでしょうか。

FIFA(国際サッカー連盟)、Jリーグ、IOC(国際オリンピック委員会)などの公式フォトエージェントを担当しているゲッティイメージズが、女子サッカーチーム「日テレ・東京ヴェルディベレーザ」の広報を担うお二人に聞きました。

戦闘モードと普段の表情、ギャップが女性ファンをひきつける

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ゲッティイメージズ(以下、ゲッティ):日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」が9月に開幕することになりましたね。
私たちもスポーツのビジュアル提供に力を入れているので、開幕をきっかけとした女子サッカーの盛り上がりにとても期待しています。
広報の皆さんはファン層を拡大するに当たって、どんな写真が求められていると感じますか。

ベレーザ広報担当 / 田中萌亞名さん(以下、田中):興味を持っていただくことがまず大事なので、オフィシャルで撮影している写真もかっこいい、迫力があるというだけでなく、良い表情でプレーしているかどうかという視点で選んでいます。
また従来のリーグは、40~50代の男性がサポーターの中心だったので、女性サポーターをひきつけるビジュアルも求められていると思います。

ゲッティ:そうなんですか!女子サッカーのプレーヤー層は拡大していると思うのですが、サポーターが男性中心なのは意外ですね。
プレー中の写真についてお話がありましたが、私たちは競技中の選手を撮影する際、写真の美しさに留まらず、アスリートとしての激しい感情表現や体のぶつかり合い、ボディランゲージなどもきちんとキャプチャーすべきだと考えています。
その際、ステレオタイプな性別のイメージや外見的な魅力に過度に囚われていないかのチェックも行っています。

ベレーザ広報部長 / 倉林佑弥さん(以下、倉林):チームとしては非常にありがたい取り組みです。試合前はきちんとメイクしている選手たちも、ピッチに立てば戦闘モード、無我夢中でプレーしています。そのストイックさと日常生活で見せる和んだ表情とのギャップが、女性ファンを引き付けると思うのです。
ですから私たちも、ピッチの内と外、試合中と試合後といったシチュエーションごとの写真を大事にしています。
またベレーザの選手たちは普段の表情も生き生きしているので、機会をとらえて日常のショットも紹介するようにしています。

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ファッション好きにママ選手。男女超えて個性を切り取る。

ゲッティ:選手から、「こんな写真を撮ってほしい」というリクエストはありますか?

田中:選手によりますね。例えば日本代表の「なでしこジャパン」に選出されている清水梨紗選手は、普段から身だしなみに気を遣っているので、ファッション系メディアの取材を受けた時、とても新鮮で楽しかったそうです。その時の写真を自分のSNSにアップしたら、フォロワーも増えたと話していました。チームとしても彼女たちには、個性を存分に生かしてほしいと考えています。

倉林:一方、メイク道具をほとんど持っていない選手もいれば、 岩清水梓選手のように、結婚・出産を経てピッチに戻ってきた選手もいます。
さまざまな選手の人間性や個性をフューチャーすることで、チームとしてもいろんな「顔」を見せていきたいと思っています。

ゲッティ:ステレオタイプな「女性選手」ではなく、それぞれの趣味や親としての顔など、選手の個性を表現する写真が、ファンをひきつけるのですね。
世界で女子サッカーといえば、米国のミーガン・ラピノーさんは選手として超一流の実績を上げる一方、男女の待遇格差改善を訴える発言などでも知られています。
彼女やテニスの大坂なおみ選手のように、SNSで積極的に発言し、オピニオンリーダーとしての地位を確立する女性もいます。選手の情報発信については、どのようなスタンスで臨んでいますか。

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Wilf Thorne/ISI Photos / Getty Images Sport

倉林:さすがにラピノーさんほどは難しいですが(笑)、メディアへの対応、SNSの扱い方について、選手たちへの研修を実施しました。プロリーグの発足で、SNSの活用やメディアを通じた発信という点でもアマチュアからプロフェッショナルへと視点を変える必要があるからです。
より多くの人に競技に対する自分の思いや、ポジティブなメッセージを届けるための方法を伝えたいと考えています。
自分が言いたいことを制限せず、選手個々の個性に注目していただき、積極的に彼女たちの思いを伝えられる形を模索していきたいです。

田中:選手たち自身も、さまざまな場面で「プロとして注目される以上、責任ある発信をしたい」と発言しています。
クラブのために情報発信したいという思いも強く、自分たちのSNSでイベントの告知をしてくれたり、練習の写真をアップしたいと言われたりすることもしょっちゅうです。
広報としても、選手たちの貢献に助けられているという思いがあるので、しっかりサポートしたいですね。

女子サッカーを盛り上げるため、ビジュアルにできること

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ゲッティ:日本で女子サッカーといえば2011年の代表チーム「なでしこジャパン」の女子W杯活躍がとても大きかったように思えます。

倉林:2011年のW杯優勝と、それに続く2012年ロンドンオリンピックでの銀メダル獲得が、女子サッカーの一つのピークでした。
その後はブームこそ下火になりましたが、女子サッカーのすそ野は確実に広がりました。なでしこの活躍をテレビで見ていた世代が選手となり、この10年で伸びてきています。

田中:「W杯優勝を見てサッカーを始めた」という若手選手にとっては、当時から現役を続ける岩清水選手たちは、アイドル以上の存在のようです。
WEリーグのプレシーズンマッチが始まり、なでしこジャパンにもベレーザから複数の選手を送り出しています。私たち広報も、選手をアピールするためアクセルを踏んでいかなくてはと気合を入れています。

ゲッティ:海外では女性アスリートを打ち出すに当たって、ビジュアルをかなり戦略的に活用しています。
カルチャー誌を通じたアピールや、ダイバーシティ&インクルージョンの視点で、選手の多彩な表情を捉えることも手法の一つです。
先ほどお話の出たラピノーさんも、ゲッティのサイトに掲載された多くの画像・映像を通じて、ジェンダーに囚われない魅力をご覧いただけると思います。私たちも女性フォトグラファーの比率を高めるなどして、より多様で魅力的なビジュアルを提供したいと考えています。

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Yoshiyoshi Hirokawa / Getty Images

倉林:ダイバーシティはクラブが掲げるミッションの一つで、私たちも重視しています。
スポーツのフォトグラファーは圧倒的に男性が多いですが、私たちは女性にチームの撮影を任せていて、彼女が選手たちの個性とプレーをバランスよく、アスリートとしてのありのままの姿を切り取ってくれていると感じます。
WEリーグも「女子リーグ」であることを打ち出しがちですが、男女の垣根を超えて、もっとフラットに一つの競技としてサポーターを獲得し、盛り上げていければと考えています。

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田中:スポーツメディアだけでなくいろいろなジャンルの取材を受けることで、メディアの皆さんにも、ベレーザの選手のさまざまな個性を引き出してもらえると嬉しいです。

ゲッティ:とても参考になりました。ありがとうございました。

ありのままの魅力をビジュアル化することでエンゲージメントを高めるためのミニガイド
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▽参考リンク
経験豊かな報道撮影スタッフによるスポーツ/エンターテイメント撮影サービス
ゲッティイメージズ

※インタビュー実施:2021年4月7日

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