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かえるの恩返し

母がかえるを助けたという。

庭の池で、網に引っかかっていた瀕死のひきがえるを見つけ、網を切って放してやったらしい。
(家の池には金魚がおり、時折やってくるシラサギが金魚を捕食しつくして絶滅に瀕した悲しい過去があることからサギよけの網が被せられるようになったのだ)

救出劇以来、庭の池からは時折ゲコゲコと奴の鳴き声が聞こえる。どうやら息災のようである。



昔から我が家の池には大量のひきがえるが年一でゲコゲコ押し寄せてきてゲコゲコ産卵し、大量のおたまじゃくしが孵って小さいかえるになって、いつのまにかゲコゲコどこかへ旅立ってゆくのが春から初夏の風物詩的イベントであった。

ひきがえるたちのゲコゲコが聞こえると「今年も帰って来たなぁ」と思ったものである。

両手にしっかりおさまるくらいの、でっぷりとした茶色いひきがえる達のことが私は昔から好きであった。
頑固そうな顔にまるい体がかわいらしいと思っていたし、好きな季節を告げてくれるところも気に入っていた。

小さい頃、ひきがえるの数匹がうっかり玄関に入ってきてしまったことがあり、靴の中にすっぽり居座っていた時はおかしくてしょうがなかった。たしかあの時の靴も母のものだった。

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