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起こしてはいけない獣

どうも。

KONGです。

本日は、高校生3年の時のお話。

KONGの通う高校には『体育祭』がなく、代わりに『球技大会』と言う催し物があった。

選べるスポーツは2種目。

室内競技のバスケとバレー。

球技大会では、バスケ大会とバレー大会が同時に開催され、全生徒このどちらか1つには必ず参加しなければならなかった。

男女別、学年関係なく、各クラスで勝敗を決める。

高校生活、最後の球技大会、

体格の差もあるだろうが、毎年優勝は3年の何処かのクラスだった。

今年3年生である自分のクラスが優勝する可能性が高い。

熱ならない理由はない。

ちなみにこのチーム編成には特別ルールがあり、その競技の部活動に所属している人は1チーム3名まで参加が可能だった。
(もし5人もバスケ部員がいたら、相手が勝つ可能性が非常に低くなってしまう為)

小学校からバスケを続けていたKONGだったが、今年出場した種目は『バスケ』ではなく、『バレー』だった。

その理由は、KONGが毎年見てきた結果、バレーの方が試合に掛かる時間が長く、試合自体が終わるのが遅い事にある。

バレーが決勝戦をやる頃にはバスケの方はもう全試合消化している為、バスケを選んだ生徒たちが、バレー観戦になだれ込んでくるのだ。

つまり、決勝戦での盛り上がりや、「キャーー!!」といった黄色い歓声が、バスケよりも断然大きい。

決勝戦へ行けば目立てる。

もう一度言おう。

熱くならない理由はない。

しかし問題もあった。

KONGのクラス3年5組には、バレー部や経験者がゼロだったのだ。

そこでKONGは事前のクラス内布教活動をし、球技部の数名を「バレー」に参加させていた。

とはいえ、体育の授業で適当に人数を合わせて試合を行うも、サーブからのレシーブでボールがコートの外まで飛んでいったり、人と人の間に『ポトン』とボールが落ちる場面が多かった。

しかもこのチーム。

スパイクを撃てるヤツが1人しかいない。

バレー部のような、下に『ドスン』と決まるような攻撃は殆ど出来ず、相手のミスを待つ泥試合方式しか取れなかった。

絶望的な状況。

「こりゃ…ヤバい…。」

「なんとかして、決戦までいかんと…」

「他のヤツらの試合がキャーキャー盛り上がってるとこなんて見たくねぇよ…」

唯一の救いは、クラスの中の『サッカー部』や『テニス部』はボールから逃げるより向かっていける人種が揃っていた事。

彼らと練習を重ねる毎に、KONGたち3年5組は少しずつ、なんとなく、バレーの形をとれるようになっていった。

決戦当日。

一回戦は、3年5組 対 1年7組

相手のクラスにはそれぞれの部活動の後輩もいるので、先輩達が圧をかける。

「お、高木くんじゃないか。」

「ちわす…」

「今日も部活、夜呂死苦ね」

なんともスポーツマンらしくない光景だ。

バスケのような接触プレーがないバレーではネット越しの『呪い』でしか、相手にダメージを与えれないのだ。

許してくれ。

俺達はなんとしても決勝戦で黄色い歓声を浴びたい『目立ちたがり屋』なんだ……。

こうして3年5組は、なんとかかんとか『呪い』『泥試合』を駆使しながら、いよいよ準決勝まで進んだ。

その時

「バスケの試合終わったらしいよ!」

と吉報が入り、続々とバレーコートの近くに、バスケを選んだ生徒達が集まってきた。

目立ちたがり屋の3年5組のボルテージもあがる。

準決勝の相手は同じ3年生。

バレー部やバレー経験者が多数で、なにより5組とは真逆の『圧勝』で勝ち進んできた、優勝候補のクラスと当たる事になった。

ネット越しにバレー部が爽やかに声を掛けてくる。

「カイちゃん!
なんだかんだで、5組強そうじゃん!!」

絶対的な自信がある表情。

対してコチラは呪い発動。

「マジデ、オマエ、スパイクスンナヨ?」

「OK!!ww
でもボールが来たら打つよw」


眩しいぜ。

コートの照明のせいなのか、
俺たちが泥試合を続けて来たからなのか、
スラムダンクの三井寿が殴り込みに行った時はこんな気持ちだったのか…。

などと考える暇もなく、
コチラのサーブから試合が始まる。

相手陣地に飛んだボールは、まるで練習かのように『ヒョイ』と拾われ、今まで5組が戦ってきた、アタフタした相手達とは比べモノにならないほど、優雅かつ綺麗にトスが上がり……

マグナムボンバー!!!!!

ドン!!!

「ィィッッッッ!!」

手に当たる事もなくコートを跳ねるボール。

「いやいやいや…」

「むりムリ無理」

「こんなに速ぇのか…」

一撃で、目立ちたがり屋達は格の違いを見せられたのだった。

さらに続いて相手のサーブ。

ヒョイと上げられたボールにジャンプして打たれたジャンピングサーブ。

初めて見たジャンピングサーブは、今まで味わったフワフワサーブとは全くの別物であり、『綿菓子』から『エクレア』ぐらい姿を変えてKONGの前にズドン。

徐々に集まるギャラリーも

「すげぇ」
「カッコいい」
「ジャンプ高い。」

男女問わずキャピキャピし出す始末。

しかし、目立ちたがり屋達は

「ただのサーブじゃねぇか。」
「止まって見える」
「ドンマイドンマイ。」

と、流石球技の選手なだけあって、目立ちたがり屋+負けず嫌い故に、逆に燃え出したのだ。

「先ず一本取ろう。」

ようやくスポーツマンらしくなって来た。

その時、相手がまさかのサーブミス。

ミスしたのに何故か爽やかさと余裕の表情で

「ドンマイw狙いすぎたねw」

と、軽くハイタッチ。

は?

何故、点を取ってないのにハイタッチをするんだ?

そして「狙いすぎた」だと?

ボールの飛んだ先は明らかにKONGの方向だった。

KONGの中で別のKONGが叫ぶ。

「クリリンのことかぁぁぁぁぁ!!!」

ゴゴゴゴゴ!!

ついに、奴らは起こしてはいけない獣を起こしてしまったのだった。

反撃開始。

コチラのサーブになりサーブが放たれる。

マジになったテニス部の、初めて出す見様見真似のジャンピングサーブ。


バシン!!!


KONGの後頭部に直撃。

鈍い衝撃が走る。

笑うギャラリー達。

笑うチームメイト。

俺が目立ちたいのはコッチ方面じゃない…。

そしてコレが最後のチャンスとなり、
起こしてはいけない獣は、
春と間違えた動物のように再び眠りにつき、
試合は終わったのでした。

それでは!

また!

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