アメリカの小学校で日本文化を紹介してわかった3つのこと
外国人に向かって、なんでもいいので日本文化を紹介してくださいと言われたら、あなたはなにを紹介しますか。
アニメ、ゲーム、相撲、寿司、着物…
あり過ぎて迷ってしまうくらい、日本には人を惹きつけるコンテンツが溢れています。
先日、アメリカの小学校で国際文化祭が開催され、小1とキンダーガーテン(小1になる直前の学年)の我が子と一緒に、日本文化を紹介してきました。
わたしが選んだ文化コンテンツは、習字。筆を使って墨で文字を書くのは、多くの人にとって珍しくて新鮮に感じてもらえるのではないかと考えました。アニメやゲームのように既に人気があるものをなぞるのではなくて、日本にはこんな文化があったんだ、と新しく発見してもらえたらいいなという思いもありました。
ちなみに、わたしたちの住んでいるところは、ワシントンDCから車で30分くらいの郊外の街。とにかくいろんな国・地域にルーツを持つ人々が住んでいる国際色の強い地域です。
アメリカの小学校で、日本文化として習字を紹介したらどんな感じになったのか、レポートします。
イベントの概要
「カルチュラマ(Culturama)」と名付けられた今回のイベント。小学校に通う子どもたちやその家族の中から参加者を募り、アナタの属する国や文化を自由に紹介してください、というもの。みんなで外国や異文化について学び、体験を通じて楽しもうという趣旨です。
PTAが執行部となって準備し、当日は総勢25の国・地域がブースが立ち並びました。300人以上が来場し、大盛況となった今回のイベントでは、ブースだけでなく、伝統芸能を披露するパフォーマンス部門、伝統衣装を紹介するファッションショー部門も行われました。
日本ブース
まず、わたしが準備した日本ブースの紹介から。
●ポスター
三つ折りのポスターいっぱいに、日本地図を描き、主な都市とそこにまつわる写真をぺたぺたと貼り付けました。写真は、主に昨年の夏に家族で日本へ帰省したときのもの。あとは、日本の国旗や、人口などの基本的情報を紙に書いてポスターに貼りました。
立ち止まってじっくり文字を読む人はきっと少なくて、視覚的に訴える内容の方が見てもらえるだろうと思って準備しましたが、それで正解でした。日本の地図や写真が目について興味を持ってブースに立ち寄ってくれる人がほとんどでした。
●習字のデモンストレーション
わたしが準備したアクティビティは、来てくれた人の名前をカタカナで書いてあげるというもの。ソフィア、マイケル、というように。
ただ書いてみせるだけでなく、細長く切っておいた画用紙に名前を書き、紐をつけてしおりにして、お土産として持ち帰ってもらいました。使い道があれば、すぐ捨てられることもないかなという狙いです。このイベントが終わった後も、みんなの生活の中に、ひっそりと日本を忍ばせたくて。
自分で書いてみたい!という人には、お手本のカタカナを書いてあげて、それを参照しながら習字を体験してもらいました。
このアクティビティが思った以上に好評だったのです。わたしの左右には常に順番待ちをする子どもたちの列ができ、大人数を相手に一人でさばいていたわたしは約2時間、休憩なしにぶっ通しでカタカナを書き続けることになりました。中には、このイベントに来られなかった家族の分まで書いてほしいと頼まれたり。
自分の名前が日本語で書くとどうなるのかという点に興味を持ってくれた人や、筆で文字を書くという行為がエキゾチックに感じられた人も多かったようです。しおりは縦書きで作ったのですが、「横じゃなくて縦に書くの?」と確認してくる子が何人もいて、そういうところも珍しいんだなと気付きました。
●おやつの試食コーナー
日本のおやつを気軽につまんでもらおうと思い、海苔巻きおかきと海老せんべいの試食コーナーを作りました。いまの日本人がよく食べるおやつといえるのかはよくわからないけれど、日本人のわたしにも日本的に思える典型的なスナックに思えたので。それに、日米混血の我が子にウケがいいことも選んだ理由の一つです。
日本ブースの一角におかきとおせんべいを器に盛っておいておき、自由に試食できるようセッティングしました。
●わたしたちの衣装
わたしと子どもたちは、イベントの間、友人に貸してもらった浴衣を着て参加しました。着付けなんて習ったことがないし、ましてや自分で着た経験もゼロ。それでも、友人に教えてもらった一回きりの練習で、自分と子どもたちの着付けをなんとかしました。
浴衣を着て、イベント終盤に行われたファッションショーにも出場しました。(後で写真を確認したら、帯の位置が下がってずん胴に見えましたが、ここはアメリカ、気にしない、気にしない…。)
実際にやってみてわかったこと
①日本人にとって身近で普通のものが、外国人にはカッコいい!
浴衣×習字×カタカナというのは、どうやらアメリカ人にはカッコいい組み合わせだったようです。
日本というと、ポケモンをはじめとするアニメやゲームを思い浮かべる子どもが多いのが事実です。だから、浴衣を着て、習字で文字を書くというデモンストレーションは、ちょっと古臭くて、いかにも文化体験というステレオタイプな印象を持たれるかもしれないな、という一抹の不安がありました。
でも蓋を開けてみたら、そんな不安は全く気にする必要がなかったことがわかりました。上述したように、子どもたちがひっきりなしに寄ってくる。子どもだけでなく、親の中にも筆で書いてみたいと声をかけてくれる人がいました。
浴衣姿で、筆を静かにおろし、文字をさらさらと書いていくと、「wow…」とか「cool!」という囁きが背後から聞こえてくる。カタカナで書かれた名前入りのしおりを「はい、どうぞ」といって渡すと、ぱぁっと表情を緩ませ、「Thank you!」と声を弾ませて帰っていく。
来てくれた人たちの好奇の視線や生き生きとした反応を目の当たりにしながら、日本人にとって見慣れた普通のものが、ところ変わればまったく違ったリアクションが返ってくることに、異文化体験の醍醐味を感じました。
②日本ファンは文句なしに日本が好き!
ブースにはひっきりなしに人がきて、次々と名前を聞いてはカタカナで書いていく作業でそれはそれは忙しかったのですが、そんな合間にも日本について語りたくてしょうがない日本ファンに話しかけらました。
以下はほんの一例です。
わたしたちが親子3人でファッションショーに出て、舞台の上で浴衣姿を披露したときは、全然面識のない人たちも大勢わたしたちの写真を撮っているのが見えました。
日本ファンは確実に存在しています。
③日本のおかきは人気がなかった
ブースの隅に置いておいた海苔巻きおかきと海老せんべいは、最初に用意した小袋1つ分すら余ってしまうという、意外なほどの不人気ぶりでした。
当初200人程度の来場者を見込んだイベントだったので、事前にわざわざアジア系のスーパーまで行って、おかきの特大パックをごっそり買い込んでいました。おかきが全部売れてしまった場合に備えて、柿の種も数パック用意していたのですが。
習字のデモンストレーションに忙しくて、おかきやおせんべいについてはなんら紹介できず、紹介の紙を準備することにも気が回らなかったので、来場者たちは手をつけづらかったのかもしれません。時々つまんでいる人をデモンストレーションの合間に横目でちらりと見かけましたが、あまり大きなリアクションはありませんでした。
どうやらアメリカ人には魅力的なおやつではないらしい。我が家の子どもたちは大好きですが。
おわりに
アメリカに来てから、日本や日本文化を紹介する機会がちらほらあります。わたしがこのイベントに参加したのは、わたし自身が国際文化交流が好きだからでもあるのですが、もっと強く意識したのは、日米混血である我が子の半分日本人としてのアイデンティティを育むことでした。
このイベントの開催を知ったとき、真っ先に参加したがったのは小1の息子です。日本語学習を嫌がり、日本語で話しかけても英語で返してくる息子ですが、日本が好きで、自分が日本と特別な関係を持っているという感情は確実に育っているように思います。ことあるごとに日本を紹介する機会をとらえて、親子で楽しみながら子どものアイデンティティを育てていきたいと思っています。
それにしても、めちゃくちゃ準備が大変だったこのイベント。子どもたちはかけ声だけで、準備作業の戦力には全くならず、結局わたしが数日かけて作業をしました。途中で面倒くさくもなりましたが、当日嬉しそうに浴衣を友達に見せている我が子の姿や、習字で名前を書いたしおりを喜んで持ち帰ってくれる子どもたちの様子をみて、なかなか意味深い試みだったような気がしました。
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