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流浪の食微録

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知られざる美味の探求と出逢いを求めて彷徨う、ロンリー・ミニマリストの食紀行。
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#焼鳥

放浪の末に辿り着く無骨と寡黙。

放浪の末に辿り着く無骨と寡黙。

自己否定からの回避。それは孤独になることである。何があろうとも、自己を否定してはならないのだ。
大概、そんな時は焼鳥と酒が自らを救う。
直近の課題は、営業時短の中で早く店に滑り込むかである。
20時が過ぎる。
22時まで2時間を切った。
ネオンサインや暖簾を頼りに、小雪の舞う街中を彷徨うも、思いの外どの店も満席という想定外に、店さえも自己否定するのか、という思いに苛まれた。
焦燥感と諦念の間で雑居

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新子焼への期待が弾む、焼鳥たちの躍進。

新子焼への期待が弾む、焼鳥たちの躍進。

「新子焼 鳥〼」2021年2月9日(火)

『日が長くなったね』
そんな会話が彼方此方ではびこり出す頃、この地の冬は頂きを迎える。
そういった日々が流れ去る。
流れ去る?
長い間、日々が流れ去ることに大いなる疑念を抱いていた。
それはもしかしたら、ひとつの自己欺瞞かもしれない。
“人生とは、虚構ではないか?”
ぬぐいようのない自己欺瞞のうえに、突きつけられる自己疑念…
日常を越境することを試みる。

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丁寧な味を紡む焼鳥の本領に導かれて。

丁寧な味を紡む焼鳥の本領に導かれて。

「紡gi」2021年1月25日(月)

むしろ孤独によって不安を回避して生きて来たような気がした。
他者から理解されまい。
それこそが数少ない誇りのひとつでもあると自覚し続けていた。
この夜は、あらためてそんな自分と対座し、自らを労い、自らと語らうことを目指したのだ。
とはいえ、現状の危機迫る情勢はその夜を迷走させた。
道端の冷たさに、足先が次第に感覚を喪失してゆくのに、これといった店が見つからな

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静謐の雪が舞う小樽、唯一無二の焼鳥を求めて。

静謐の雪が舞う小樽、唯一無二の焼鳥を求めて。

「伊志井焼鳥店」2020年11月28日(土)

日本酒でほんのりと暖まったところで、次なる店を求めた。
本格的に小樽で酒を飲み歩くという行為は初めてであるせいか、小樽の奥処へと足を向ける時の到来に、いっそう心踊った。

駅前には、おそらく札幌での宿泊を回避した旅人らしき人々が散見された。
キャリーケースの車輪に雪が絡んで前に進まない姿に、
どこか羨望の眼差しを以て眺め過ぎた。
振り返ると遠方への旅

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