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早期退職の詩2022

私は反逆者ではない。
私は革命家でもない。
しかも、悟りを開いた伝道師でもない。

私は、微力ながらに自らの意思で、自らの小さな可能性に賭けた無力な人間に過ぎない。
世界に革命を起こすことは不可能かもしれない。
宇宙が驚愕するほどの発見や発明など不可能かもしれない。

だが無力ながら、私は反逆者や革命家としてではなく、もちろん伝道師としてでもなく、
一介の奇行児もしくは奇考児として、微力を振り絞りながら、
自らの意思で人生を、自らの手で航海しよう、と決意したのだ。
それは定められた、沈みゆく航海かもしれない。

がしかし、それが何だというのか?
私は私を不安の沼に足を踏み入れ、出られないように呪文する。
私はあとどれほどこの沼に自ら出ようとしないのだろう?

不意に空を見上げた。
変容する雲、それは時に翼となり、時に舟となって私の未来を駆り立てる。
この沼から去り、勇気を出してひとり航海に出よう。
それがイカロスの翼だとしても…

ただひとりで乗る舟は、足がぬかるむ泥舟ではなく、軽やかに浮かぶ雲だ。
それは無謀すぎる挑戦かもしれない。
崩れ落ちるならば、溶け入るようにではなく、真っ逆さまだ。

けれど、それがどうしたというのだ?
泥舟であろうと雲舟であろうと、不安という大海は目の前に広がっているままだ。

私はまだ地上にいる。
だから、地に足をつけて空を見上げよう。
生きている限り、宇宙と繋がる空を。
希望と波瀾に満ちた無限の大空を。
そして、大きく飛び跳ねよう。

落ちたらまた飛べばいい。
そして幾度となく雲舟に乗るのだ。
人はそれをシーシュポスの神話になぞるかもしれない。
未来に飛び立ち、今後待ち受ける苦難や辛酸の数々は、
護送船団で守られてきた者とっては苦痛の極みかもしれない。

それでも私は、自らの意思に従って幾度となく何かを成す覚悟と決意を表明する。
辿々しくも、頼りなくもひとり船長となって未来を大航海するのだ。
待ち受ける嵐を恐れるな。
突風や雹を覚悟せよ。
雲から落ちても大きな空を見上げ続けよう。
ひとり航海に出よう。

ボン・ヴォヤージュ!

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