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【夏の文庫フェア】【キュンタ】『キッチン』吉本ばなな


言葉の一つひとつが繊細で、きらきらしていて、宝物のような物語。


夏の文庫フェア、7冊目。新潮文庫の100冊より、『キッチン』(吉本ばなな 著)を読んだ。プレミアムカバーということで、開く前から心躍る。



祖母を亡くしたみかげ


台所が世界で一番好きな場所だというみかげは、二人で暮らしてきた祖母が亡くなった後、祖母のお気に入りだった青年、雄一と、その母親(父親)で元男性のえり子さんと一緒に暮らし始める。


みかげは両親を幼い頃に亡くし、祖母もいなくなってしまった。雄一も本当の母親(男性だったえり子さんの妻)を幼い頃に亡くしている。


このお話は、大切な人を失うお話であると言えるけれど、言葉一つひとつの繊細さやきらきらしている感じが、哀しさや寂しさよりも、なんだか安心感をもたらしてくれる。


繊細さの中の力強さ


静かさや繊細さの中にある力強さ、大切な人を失っても生きていかなければならないみかげたちの生命力のみずみずしさも、とても魅力的だ。


私は、みかげが雄一にカツ丼を届ける場面が好きだった。タクシーで向かうのも、屋根に上るのも、二人で食事をするのも、とても良い。


一緒に食事する関係の人たちを改めて大切にしたい


読み終わってぼんやり考えるのは、誰かのために食事を作るのも、誰かに食事を作ってもらうのも、誰かと一緒に食事をするのも全てかけがえのない時間で、そのような関係にある人たちを改めて大切にしたいということだ。


この本にある宝物のような言葉たちを胸に、周囲の人たちと温かい関係を築いていけたら、保っていけたらと思う。


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