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GENT’S STYLE レクチャー 赤峰幸生氏 「日本人として何を誇るべきか?日本の美しさについて語る」前編

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 近年、「日本人は自信を失っている」と題した記事が目につくようになった。日本経済は停滞し、人口は減少を続けている。この激動の時代にあって、私たち日本人は何を誇り、何を指標とするべきか。

 日本のみならず海外にも多くの知己を持ち、メンズウェア業界の重鎮である赤峰幸生氏に、日本人らしさ、その本質を実感できる場所で取材したいと依頼した。こうして今回のインタビューの舞台に選ばれたのは蕎麦の老舗、神田まつやである。

 神田まつやは創業明治17年(1884年)。石臼挽粉を使用した手打ちの蕎麦をはじめ、蕎麦の味のみならず、大正15年(1926年)、関東大震災後に建てられた家屋の佇まい、人々が蕎麦を味わう日々のくらしの有り様まで、江戸の良き庶民文化を現代に受け継いでいる。

 この蕎麦をこよなく愛した文豪、池波正太郎は自著『むかしの味』で、「まつやで出すものは何でもうまい。それでいて、蕎麦屋の本道を踏み外していない」と書いた。

 池波正太郎のみならず、東京の神田という場所が持つ歴史と共に、数多くの文化人に愛されたことでも知られている。

 6代目当主の小高孝之氏は30年近い蕎麦作りの経験を持ち、先代の父である5代目小高登志氏から江戸伝来の蕎麦作りの製法を継承している。

 赤峰氏はまつやに通って40年になるという。先代の小高登志氏以来の贔屓だ。「山葵多め、そばは少なめで」。まず、いつものように赤峰氏が注文して、インタビューは始まった。


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