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筋肉を増やしたければプロテインより「海藻」をとりなさい #4 すごい酪酸菌

「腸内環境」は、私たちの健康に大きな影響を与えます。なかでも、「酪酸菌(らくさんきん)」を多く腸内に持っている人は、長生きであることがわかっています。さらに最新の研究では、新型コロナや花粉症にも驚きの効果をもたらすこともわかってきました。なぜ酪酸菌が免疫力を高めるのか? どうすれば悪玉菌を減らして酪酸菌を増やすことができるのか? 「腸のカリスマ」の異名をもつ消化器専門医・江田証先生の『すごい酪酸菌』より一部をご紹介します。

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「筋肉にたんぱく質は必須」は本当か?

ここで問題です。筋肉にとって「たんぱく質」は絶対必要なのでしょうか? 肉食は、筋肉合成のために必須なのでしょうか?

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(写真:iStock.com/Viktor_Gladkov)

標高1500m以上に住むパプアニューギニア高地人たちの全身は、しっかりした筋肉で覆われています。だからといって、彼らは特にウエイトトレーニングをしているわけではありません。しかも、たんぱく質摂取量は、私たち日本人の約半分です(日本人の1日あたりのたんぱく質摂取量は約80g、パプアニューギニア人は約40g)。

彼らの主食はさつまいもです。1日に1.5㎏ものさつまいもを食べています。肉は年に1回のお祭りのときに豚肉を焼いて食べるくらいです。つまり、たんぱく質を摂らなくても、さつまいものでんぷん(糖質)だけで筋肉質な体でいることができるわけです。

パプアニューギニア高地人の腸のなかには「窒素固定菌」がいます。彼らがさつまいもを食べると、それが代謝され腸内でたくさんの窒素が生まれます。窒素固定菌はこの窒素を食べ、その結果としてアミノ酸が生まれます。このアミノ酸がたんぱく質となり、筋肉になるのです。

実は太平洋戦争時に、パプアニューギニアで捕虜となった日本人がいたのですが、彼らはさつまいもを筋肉に変えることができず、ガリガリにやせてしまいました。なぜでしょう? いま腸の研究が飛躍的に進み、さまざまなことがわかってくると、パプアニューギニア人と日本人の差は腸内細菌の差なのではないかと気づきます。

パプアニューギニア人はさつまいもを食べて筋肉を増やす。日本人は海藻や豆、野菜、果物を食べて筋肉を増やすのです。地域による食物の差が、腸内細菌を変え、その土地のメインの食材で生きていける体になっているのです。

さて、冒頭の質問ですが、筋肉にとってたんぱく質は不可欠なのでしょうか? 実は、肉を食べているから筋肉が多いのではありません。長寿には筋肉が必須ですが、肉を食べることが絶対条件ではないのです。

日本人の長寿村での調査を見ても、肉を食べなくても長生きしている人はたくさんいます。宗教的な理由などで肉を食べない人もいるし、ベジタリアンやヴィーガンの人もいます。しかし、彼らが特に短命であるという報告もありません。


日本人らしい筋肉の増やし方がある

筋肉を増やすには運動前にたんぱく質を摂ることが良いとされていますが、あまり効率的ではありません。いくら摂っても腸のなかで消化吸収されてから血液中に入るので、筋肉になるまでに時間がかかるのです。

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(写真:iStock.com/Amarita)

それよりも運動後20分以内にプロテインのようなアミノ酸製剤のドリンクを飲む。すると、すぐに筋肉に変わることが時間栄養学でわかりました。

そこで、ジムでのトレーニングのあとにプロテインを飲む人が増えています。筋肉を増やすことは長寿につながりますのでとても良いことです。しかし、運動もせずにプロテインに頼っているのであればそれは少し話が違います。

確かに低カロリーで効率よくたんぱく質を摂れるプロテインは手軽ですが、日本人の食生活にはもっと手軽で身近に筋肉が増やせる食材があるのです。それが海藻です。

海藻を食べて、酪酸を腸のなかで増やすことのほうが、ずっと自然で、日本人らしい筋肉の増やし方なのです。

しかも、酪酸が増えると新型コロナウイルスなどの感染症にもかかりづらくなるなど、さまざまな副次効果があります。通常の食事から摂取できるので経済的でもあります。

ぜひ「プロテインよりも海藻を」と覚えておいてください。

最近では、高齢者向けのプロテインも登場しています。それは高齢者の一度落ちた筋力を回復させるのは難しいからです。深刻な状態になる前に、普段の食事から意識して筋肉を増やしたいものです。

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すごい酪酸菌 病気になる人、ならない人の分かれ道

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