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毎朝、起きたら「今日やるべきこと」を決めなさい #1 明日死んでもいいための44のレッスン

社会現象にもなったベストセラー『家族という病』で知られる、作家・エッセイストの下重暁子さん。著書『明日死んでもいいための44のレッスン』は、84歳(執筆当時)になった下重さんが、みずからの「死」について考えた一冊。「明日、死んでもいい。むしろ死という未知の体験が楽しみ」と明るく語る下重さん。いずれ訪れる死を穏やかに迎えるための知恵が詰まった本書より、一部を抜粋してお届けします。

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自分で決めたことなら従える


私の朝は遅い。なぜか。夜寝るのが遅いからそうなる。9時過ぎには目覚めているが、ベッドの中で、今日一日の、やるべきことを考えている

やることが決まったら、それをどういうやり方でやるのか? そのためにはどうしたらいいか? 外の仕事なら何時に出て、何を着ていくべきかなどを考えて、1時間はゆうにかかる。というわけで、起き上がるのは10時過ぎになる。
 
6時起きでも8時起きでもいいが、目覚めてから最初の1時間は、その日すべきことのために使ってみていただきたい。決して無駄ではないはずだ。
 
私にとっては、一日を決定づける大切な時間、決しておろそかにはできない。この1時間が充実しているかどうかで、その日一日の充実度も左右されるからだ。
 
私はもの書きという自由業だから、自分で自分を律しないと、どこまでもだらけてしまう。自分で自分の予定を作って、自分を縛る。私は他人から管理されたり縛られたりすることが大嫌いだが、自分で決めたことなら、素直に従える。
 
大学を出て放送局に入り、9年でフリーになり、そこから自己管理が始まった。自分の決めたことには忠実なので、それを守る。少々辛くとも、自分で決めたことには責任を持たねばならない。そうしないと自分を裏切ることになり、後々しっぺ返しを食うことは経験済みだ。

無理に予定を詰め込まない


私の場合、机の前に座って1行書き出せばしめたもので、後は芋づる式に言葉が出てくる。原稿だけは自筆で、パソコンは使わない。それが一番早いのだ。どこに行こうが、紙と鉛筆かペンがあればできる。原稿を書き直すことはほとんどない。

その代わり、何を書くかを考え、納得するまでに時間がかかり、朝起きて軽い食事をとる時も考えている
 
1時間かけて新聞2紙を読む時にも、まだ考えていることがある。午前中が過ぎてしまい、ようやくテーマが決まっても、最初の1行をずっと考えている。
 
午後になって机の前に座る時は、すでに頭の中にあることを書くだけだから、後は自分でひと区切りつけるまで、すらすらと行く。書き始めれば早い。推敲は後でするので、ともかく終わりまで書く。一気に書いてしまわねば、勢いがなくなるからだ。私には少しずつ書き進めることができない。
 
作家の浅田次郎氏が同じだと知った時は、嬉しかった。しかし浅田氏の場合は、手書きのしっかりとした大きな字が原稿用紙のます目を埋めている。あの力強い文字を何百枚もの原稿に書きつけていくのには、いったいどれほどの気力体力がいることか。
 
私は決して無理はしない。若い時ならいざ知らず、調子に乗ると、翌日こたえる。長続きしないから、諦めが大切。この辺でと区切りをつけて、翌日へ持ち越すこともある。
 
最初から無理な予定を詰め込むのではなく、あくまでマイペースに。自分で決めたことは、たいていその日のうちに終えている。
 
一生は、一日一日の積み重ね。その一日が、自分のやりたいこと、やろうと決めたことで満たされるのであれば、仮に明日死んでも、悔いはないのだ。

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明日死んでもいいための44のレッスン


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