「断捨離」提唱者と考える、なぜ本を捨てるのは難しいのか? #5 捨てる。
「断捨離」というと、家の中のことだけと思っていませんか? 実はビジネスにも、非常に役立つ考え方なのです。「断捨離」の提唱者、やましたひでこさんの初のビジネス書、『捨てる。――引き算する勇気』は、「書類は読み終えた瞬間に捨てる」「名刺をとっておく意味はない」「デスクの上には進行中の書類だけを置く」など、読めば試してみたくなるノウハウが詰まった一冊。その気になる中身を少しだけご紹介します。
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本にはコンプレックスが潜んでいる?
あなたの本棚には、大量の本が並んでいませんか?
本は意識が高く、勉強熱心な人が陥りやすい情報の落とし穴です。
インターネットの情報を捨てることができても、本となると捨てることに抵抗を感じる人が少なくありません。
なぜ、読んでいない本を本棚に並べるのでしょうか?
遊びに来た友だちから「いっぱい本があるね」なんて言われると、ちょっとうれしかったりします。「こんなにたくさんの本を読んだ私」は、確かに少しばかり誇らしいもの。たくさんの本たちは多くの知識を持っている証拠品と言えますものね。
でも、大量の本を溜め込んでおくのは、知識に対するコンプレックスの表れなのかもしれません。
断捨離の入り口はモノの整理ではありますが、それは最初の一歩にすぎません。モノとの関係を問い直して、自分自身の執着や観念に気づいていくための方法です。
本も同じです。でも、本はなかなか捨てにくいですよね。私も幼い頃から、「本を踏んだり、またいだりしたら、字が読めなくなる」と、よく母から言われました。「本は知の象徴」と思っている人も多いのでは? 本は特別な存在で、その意識は世代を超えて受け継がれているようです。
ここで、少し考えてみましょうか。本を捨ててしまうと、読んで得た知識もなくなりますか? いえ、そんなことはありませんよね。本というモノがなくなっても、知識はあなたの頭の中に入っています。知識の多さを、蔵書の数で証明する必要はないのです。
執着を手放すと「いいこと」が起きる
本を捨てられない背景には、知識に対する執着やコンプレックスが潜んでいる可能性もあるのです。講演会やメルマガなどで、いろいろな方と触れ合っていますと、特に男性の方の方が、大量の本を抱え込んでいるようです。
「賢く思われたい」「知的に思われたい」といった知識に対するプライドも、男性の方が強いような気がします。
英語の学習書を大量に持っている人は、英語という知識にコンプレックスを感じているのかもしれない。大量の小説、大量のビジネス書、大量の教養本、大量の勉強本……。自分の本棚を丹念にチェックしてみる。そこには、何かしらの執着やコンプレックスが潜んでいるかもしれないのです。
お金儲けの本を47冊も断捨離した女性がいます。彼女は、そのとき「お金を追い求める自分」「お金持ちになりたいと固執する気持ち」も一緒に手放せたと言っていました。お金持ちになることに、長年固執していた観念が、47冊もの金銭的成功本に姿を変えて、家の中に積み上げられていたわけです。
47冊の本を潔く捨てたとき、同時に「お金持ちが人生の成功者」と思い込んでいた観念も、乾いたかさぶたが剥がれるように取れていったのでしょう。
この女性には、後日談があります。なんと、絶縁関係にあった親から財産分与があったのです。お金に対する執着を捨てたら、お金が舞い込んできたのですから、面白いものですね。
手始めに、雑誌からスタートしましょうか。何年も前の雑誌が置きっ放しになっていませんか? 「いつか、また読むかも」という理由で捨てられない人も多いもの。でも、「いつか」とは、いったいいつでしょうか?
そういう私の本棚にも、最近まで趣味の雑誌が20冊ほど並んでいました。でも、バックナンバーをさかのぼって読むことは、ほとんどありませんでした。興味のある記事、ためになる記事はありましたが、1度読んでしまえば終わりです。
本も同じですよね。一度読んだ本をもう一度読み返すことは少ないですよね。でも、なかなか踏ん切りがつかないのが本の偉大なところ。少しずつでいいので、「もう読まなくなった本」を間引いていきましょう。
ここ数年間、一度も手に取っていない本は、もうあなたとの関係が終わっている本です。本棚から退去してもらってもかまいませんね。
それでも「また読むかも」と思ってしまう人は、「どうしても読みたくなったら、また手に入れられる」と考えてみてください。確かに二度買いになってしまいますが、「いつか」のために本棚を占領しておく必要はないのです。
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