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今日という日に集中すれば「老後不安」は消えていく

大ベストセラー『嫌われる勇気』の著者として名を馳せた、アドラー心理学の第一人者、岸見一郎さん。そんな岸見さんの幸福論の決定版が、著書『成功ではなく、幸福について語ろう』です。アドラー心理学をベースに、仕事、恋愛、子育て、介護など、あらゆる悩みに答えた本書は、「人生相談」形式になっており読みやすさも抜群。そのうちのいくつかを抜粋してご紹介します。

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相談「“人生百年時代”といわれる中、幸せな老後がイメージできず、長生きすることに不安を覚えています」

近頃さかんに「人生百年時代」という言葉を目にしますが、そんなに長生きするかと思うとぞっとします

勤めている会社は斜陽産業で、これからは人工知能にどんどん仕事も奪われるでしょうし、高齢化社会、人口減、政治不信、考えれば考えるほど幸せな老後など期待できず、長生きなんてしたくありません。かといって自殺するほどの勇気もなく、岸見先生はこの高齢化社会をどうお考えでしょうか?

(会社員・38歳・男性)

お答えします

社会のあり方は、あなたの幸福を決定するものではありません

以前、これから先四十年も同じ生活をするのは苦しいと自殺を試みた若者がいました。今の世の中、一年後ですら何が起こるか予想することは難しいので、この若者が後四十年も今と同じ生活が続くと思っていることに私は驚きました。

しかし、同じ生活が続くとすればそれはありがたいことだともいえます。毎日、何が起こるかまったく予想もつかない波瀾万丈の人生を望む人が多いとは思いません。

さりとて、今日という日が昨日とほとんど変わらず、明日もまた今日の延長だとしか思えなければ、格別の不満がなくても、常に何かしら満たされない思いを持って生きることになるかもしれません。そのような思いと共に、これからも同じ生活が続くと思うと、漠然とした不安を感じるということはあるでしょう。

同じ生活が続くのならまだしも、将来に対して希望を持てず、長生きをしても幸せな老後など期待できないのであれば、いよいよ先行きが不安になります。

今日という日に集中する

しかし、これからいいことがないのなら長生きしないというのはおかしいと思います。

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まず、社会が高齢化していくことに個人が何かできることがあるかといえば何もないかもしれませんが、そのような社会で生きることから逃れる前にその中でどう生きていくかを考えることはできます。

次に、幸福はこれからの社会がどうなるかによって決定されません。たしかに、社会のあり方は人が幸福に生きることに大きな影響を及ぼしますが、例におあげになっている政治についていえば、政治不信といってすませるのでなく、政治を変えていく努力はできます

政治家に幸福にしてもらおうなどとは私は思いませんが、政治家に不幸にされたくはありません。後は野となれ山となれではなく、きたるべき世代のことを考えることも必要です。

さらに、長生きするかと思うとぞっとするということですが、今後長生きする人が増えていくというのは事実であっても、自分が何歳まで生きることになるかは誰にもわからないのです。長生きしたい、したくない以前に、そもそも長生きできるという保証はどこにもありません。

そうであれば、こないかもしれない老年のことを不安に思い、幸せな老後など期待できないので長生きしたくないと思うのは、心臓はやがて止まるのだから今止めればいいと考えるのと同じように思います。

これからも生きていこうと思うのであれば、先のことではなく今日という日を今日という日のためだけに生きていくことがあなたができることです。

著者の岸見一郎さんの「note」はこちらから

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