常識をバカにして家族を尊敬する…それが幸せに生きる訓練になる #3 人生はあきらめるとうまくいく
仏教の教えをわかりやすく説いた著作で、多くの読者に支持されてきた宗教評論家のひろさちやさんが、今年4月、惜しまれつつ逝去されました。『人生はあきらめるとうまくいく』は、そんなひろさちやさんが「がんばり疲れた」あなたに贈る、とっておきの幸福論。仕事に、人間関係に、子育てに、一生懸命な人にこそ読んでほしい本書から、心にしみるメッセージをお届けします。
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世間の価値観から抜け出そう
幸せに生きるためには、人生を「あきらめる」しかありません。そのためには世間の価値観から抜け出して「あきらめる」生き方を選ぶことです。
まず、あらゆる物事を、世間から抜け出した「出世間」の問題として捉えなおしてみる訓練をしていきましょう。
一番簡単な方法は、世間をバカにすることです。前述した聖徳太子の「世間虚仮、唯仏是真」という言葉を思い出してください。「世間虚仮」、つまり世間は嘘偽りなのです。
世間の主流に乗って、風潮に乗って生きている人たちを徹底的にバカにする。面と向かってバカにしたら、けんかになるかもしれません。心のなかで静かにバカにすればいい。
自分のまわりにいる人で、新聞やテレビといったマスコミで言っていることと同じ意見の人がいたら、「バカじゃないか」と思いましょう。主流とはちょっと違う意見を持っている人がいたら尊敬します。
それから、世間で評価されている人たちもバカにする。最初に申し上げたように、専門家というのをバカにします。
専門家はその分野の奴隷。スペシャリストはバカの代名詞だと思って欲しい。「専門バカ」といった言葉がありますよね。
さらに言えば、スペシャリストのくせに自分の専門分野以外にいろいろ口を出す人がいますね。数学者のくせに愛国心だとか、スポーツ選手のくせに、人生論だとかを語る人物を徹底的にバカにします。そういう人は、どこかの宣伝マンなのです。必ず裏がある。
本人に、自覚があるのかないのかはわかりませんが、誰かの作意のなかで動いています。
一番身近にいる人を尊敬する
次にやるべきことは、尊敬すること。誰を? あなたの一番身近にいる人を尊敬するのです。まずあなたのお父さんであり、お母さんを尊敬してください。
これは一番バカにしそうな相手ですね。あなたにとって、もっともうだつのあがらないように見えるのが、お父さんであり、お母さんでしょう。
もしあなたが親なら、わが子を尊敬してください。ときどき、お母さん方から、こんな相談を受けることがあります。
「うちの子どもはちっとも言うことを聞かないので困るんです」
「あなたのお子さん、何歳?」
「九歳です」
「では、お母さんは何歳?」
「あらいやだ、先生、女性の歳なんて聞くんですか?」
「いいから、いいから、言ってごらん」
「三十八歳です」
「違うよ、お母さんは三十八歳なんかじゃないぞ」
と。みなさんたいてい不思議そうな顔をします。
「じゃ、私はいくつですか?」
「九歳。親は子どもによって親にしてもらったんだから。あなたは、子どもによってお母さんになって九年たった。だから九歳だよ」
と。ひとりで親になったわけではない。相手がいてはじめて親になれたんです。それを忘れています。
「あなたのお子さんは一生懸命人生を生きているんでしょう。それを、うちの子は言うことを聞かない、間違っている、と批判するなんておかしいですよ。あなた自身が間違っているんじゃないの?」
お母さんは黙ってしまいます。私が言いたいのは「子どもが間違っているときは、あなたも一緒に悩みなさい」ということです。「私のほうが年上でお母さんなのだから、子どもを導いているのだ」とみなさん思ってしまいますが、とんでもない。
「あなたはできそこない。お母さんとしてはまだたったの九歳なのですから。えらそうにしちゃいけませんよ」
そう言うと、ハッとした表情になり、案外みなさん気づいてくれます。
親ならお子さんを尊敬し、大事にしてあげて欲しい。子どもなら親を尊敬し、うちのお父さんはすばらしいんだ、お母さんはすてきなんだ、と思って欲しい。
そんなことは簡単にできるはずでしょう。にもかかわらず、子どもはすぐに「親父はうだつがあがらない」などと批判します。世間でうだつがあがる人間は、大なり小なり悪いことをやっているに決まっています。だから、出世するのです。
出世できないお父さんなんて、すばらしいではないですか!
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