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「ネットバカ」になるな…長谷部誠は警鐘を鳴らしていた #4 心を整える。

ワールドカップ日本代表をつとめ、現在はドイツのアイントラハト・フランクフルトで活躍する長谷部誠選手。東日本大震災直後に刊行し、多くの読者に勇気を与えた著書『心を整える。』は、150万部突破のベストセラーとなりました。あれから10年、私たちの社会はふたたび大きな困難に直面しています。だからこそ今、読み返したい本書。中身をほんの少しご紹介します。

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ゲームは「危険な遊び」

あれは確か小学校3年生のクリスマスのことだ。クリスマスイブに欲しい物を手紙に書いて、布団にもぐり込んだ。

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僕が手紙に書いたのは「スーパーファミコンが欲しい」だった。

当時、僕のまわりはみなスーパーファミコンを持っていて、「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」といったロールプレイングゲームをやっていたからだ。

朝起きてドキドキしながら枕元の箱を見た。ん? 何やら箱が小さい……。どう見てもスーパーファミコンが入りそうにない長細い箱が置いてあった。

包みを破り、箱を開けるとそこに入っていたのは真新しいサッカーのスパイクだった。1週間前にスポーツ用品店で両親と一緒に試着した、黒いスパイクだった。

そのとき僕は世の中にサンタがいないことを知った。いや、いるのかもしれないが我が家には来ないことを悟ったのだ。あの切なさは今でも忘れられない。

とにかく両親のそういう教育方針(?)のおかげで、僕はゲームをやらないというか、できない大人になってしまった。ワールドカップでは空き時間にゲームをやる選手が多かったけれど、“ゲーム音痴”の僕はまったく参加できなかった。ただし両親がゲームを遠ざけてくれたのは、今となってはすごく良かったと思っている

僕は一度やり始めると、とことんハマるタイプ。気晴らしでゲームをやるつもりが気がついたら朝までやっていた……なんてことになりかねない。時間の使い方がうまい人にとってはゲームは素晴らしい遊びになると思うけれど、僕のようなタイプには危険すぎる。

便利な時代だからこそ……

これはインターネットや携帯電話のメールにも言えることだ。

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ネットサーフィンはいろいろな情報が得られるし、特に海外に住んでいると日本のニュースを読めるのはすごくありがたい。メールやLINEもちょっとした空き時間を埋めたり、誰かにちょっかいを出すのにこれほど最適なものはない。

だが、これらに没頭しすぎてしまうと生活のリズムに影響が出てしまう。特に夜にやってしまうと神経がたかぶってしまって、なかなか寝つけないということにもなる。

あくまで僕個人の意見としては、ゲームやインターネットに時間を費やしすぎるのはもったいないことだと思う。サッカーゲームをすれば、ピッチを俯瞰して見ることができて、サッカーの役に立つという意見もあるかもしれないが、そうであったら、実際のサッカーの試合をテレビで観た方がよほど勉強になる。

それに映画を観たり、読書をしたり、語学の勉強をするなどした方が、はるかに自分のためになる。

遊びたい気持ちも分かる。誰かに心の隙間を埋めてもらいたいと思う気持ちも分かる。でも、ほどほどにしないといけない。自分で自分にけじめをつけなければならない。

息抜きも、度が過ぎたら時間の浪費だ。

便利な時代になっているからこそ、僕はITの恩恵を最小限に受けつつ、あえてアナログ的な時間の過ごし方を大事にしていきたい。

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