岡崎慎司が「世界得点王」に輝いたのは「ゴールを決めること」しか考えていなかったから #4 鈍足バンザイ!
足が遅い。背が低い。テクニックもない。そんな彼が、いかにして日本を代表するストライカーになりえたのか……。昨シーズン限りでスペインのウエスカを退団し、その去就が注目されている岡崎慎司。著書『鈍足バンザイ! 僕は足が遅かったからこそ、今がある。』は、自信が持てないとき、コンプレックスに悩んでいるとき、あなたの背中をそっと押してくれる一冊です。サッカー好きなら必読の本書、ぜひお楽しみください。
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ゴールを最優先に考える
2009年、僕は国際サッカー歴史統計連盟から表彰を受けた。その年の日本代表の試合で15ゴールを記録。世界中で行なわれた代表戦で最も多くのゴールを決めた選手となったからだ。
2008年に代表デビューしてからゴールのなかった4試合は、良いプレーが出来なかった。正直なところ、「どうして、オレが使ってもらえるんだろう? 上手い選手なら他にたくさんいるのになぁ」と、疑問を抱きながらプレーしていた。ピッチの上に立っても、一つひとつのプレーに迷いがあった。
そんな僕の様子を見かねたのだろうか、俊さんとヤットさん(遠藤保仁)から同じようなタイミングで、似たようなことを言われた。
「もっとガムシャラに、ディフェンスラインの裏を狙って飛び出していったらどう?」
この2人の大先輩は、僕が迷いながらプレーしていたことを見抜いていた。
実際、僕は周囲に遠慮しながらサッカーをしていたわけだし、出来もしないのに「日本代表のサッカーに合わせなきゃいけない」と思っていた。そりゃ、上手くいくはずがない。
2人の先輩の言葉で気づかされた。
「自分が出来ることに集中すればいいんだ」
僕の初ゴールは5試合目。その後の8ゴール目までは、常に同じピッチの上で助けてくれた中村憲剛さんというパスの天才もいた。
当時の代表にはチームメイトを活かす選手が多く、自分のように活かされるタイプの選手が少なかったのも幸いした。おかけで、僕はノビノビと、自分のやりやすいプレーを心がけているだけで良かった。そして、気がつけば16試合で15ゴールも決められたのだ。
今になって振り返ってみると、そこにゴールを決めるためのヒントが隠されていると思う。
あのときは、「ゴールを決めることをいつも最優先に考えていた」のだ。
野球の世界では「ホームランはヒットの延長線上にある」と言われている。でも、サッカーの世界では「ゴールはパスの延長線上にある」わけではない。
相手のディフェンダーが必死になって守備をしている。ゴールの前にはキーパーが立ちはだかる。そのなかでゴールを決めたければ、常にゴールを狙っていなければいけない。
ザッケローニ監督のもとで自分に求められているのは、ゴールだ。現在のチームのなかで最も多くのゴールを決めているのは僕で、そんな僕が2010年10月に監督が初めて指揮をとった試合から今まで試合に使ってもらってきたわけだから。
雑念はシュートの邪魔になる
「シュートを打って、入った! と思ったらダメなんだ。シュートがゴールラインを割ったときに初めて『よし!』と思うべきだ」
ずっと自分のアタマのなかでイメージしていたことを、言葉で表現してくれたストライカーがいる。シュツットガルトに所属する、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表のイビセビッチだ。僕とポジションを争う時期もあった。それでもライバルになり得る僕に対して、彼はアドバイスしてくれた。
この言葉を聞いたとき、ブンデスリーガで80ゴール以上を決めていて、母国をワールドカップ初出場に導いたストライカーはさすがだな、と思わずにはいられなかった。
とはいえ、これだけではなんのことかわからないだろうから、順を追って説明すると……。
シュートを打つときに「決まった!」と思って、ゴールから目を離してしまうと、視線がブレてしまう。視線がブレれば、カラダの軸もブレてしまい、シュートは安定性を欠く。基本的なことだけれど、これが案外、難しい。
ゴールが決まる前に、「これは入ったな」と思って安心しているようでは、シュートが軽くなってしまう。シュートが軽くなれば、きちんとゴールの枠に飛ぶ可能性は下がるし、シュートのスピードが落ちたり、コースが甘くなってしまったりして、キーパーに止められる可能性は上がってしまう。
だから、シュートを打つときには、ボールがゴールラインを割るまでしっかりと見届ける必要がある。
ちょっと違うかもしれないけど、ゴルフのパターなんかもそうだと聞く。打ったあとにすぐにボールの行方を見たくなるけど、すぐに見てはいけない。アタマを動かしてしまうと、ボールに正しく力が伝わらないからだという。
シュートを打つときに考えるのは、自分とゴールの間に立っているディフェンスの選手やゴールラインの前に立ちはだかるキーパーの位置、それからボールの軌道とシュートを打つコースだけ。
それ以外の情報や雑念はすべて排除しないといけない。そのあとはボールがゴールに入るまでを目で追いかける。
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