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東京都にこんな名峰が? 洋上のアルプス庭園「天上山」 #1 日本百低山

「山ガール」なる言葉も生まれた、昨今の登山ブーム。しかし、山は富士山やアルプスだけではありません。「高ければいい」わけじゃないんです! 『日本百低山』は、北海道から沖縄まで、隠れた「名低山」を山のプロが紹介する稀有なガイドブック。山好きなら絶対チェックしたい本書から、とくにオススメの「名低山」をご紹介します。

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天上山(東京・神津島村)572メートル

島の山へは船で向かいたい。潮の香りを胸に、山に臨む。船旅が普段とひと味違う山旅にいざなってくれる。

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この山は、伊豆七島の神津島にある。東京の竹芝客船ターミナルから、ジェット船なら4時間足らずの船旅だ。登山口まで、宿泊先に頼めば車で送ってもらえるという。

登山ルートは二つ。今回は黒島コースを登り、白島コースを下りた。双方の登り口にはつえが備えられている。標高200メートル弱の地点から始まる黒島コースの登山口にはトイレがあるので、用を足してスタートしよう。

文字通りの急登である。低木の中をジグザグにぐんぐん高度を稼ぐ。厳しい登りだが、道はよく整備され、標高差で約30メートルごとに「1合目」「2合目」などの標識があるから、いい目安になるだろう。

登るにつれ、足元には集落、太平洋、空港が広がり、海風が優しくほおをなでる。1時間もかからずに、10合目で山上台地に飛び出す。

秋から冬には富士山も望める!

ここからは山の楽園散歩だ。火口湖の千代池は季節により水が干上がるが、池から樹林帯を20分ほど進むと道は砂礫地に入り、表砂漠、裏砂漠へ。灰白色の岩峰が周りを囲い、白砂の砂漠とツツジやツゲなどの緑のカーペットがコントラストを描く。

緑の中に、淡いピンクから燃えるオレンジまでオオシマツツジの群落がアクセントを加える。標高600メートル弱の島の山なのに、まるで日本アルプスの天上庭園をさまよっているかのような錯覚を覚える。庭園の先に広がるのは太平洋だ。

神津島観光協会登録ガイドの前田正代さんによれば、5~6月のオオシマツツジの後はハコネコメツツジ、夏は伊豆諸島固有種のサクユリ、秋はキキョウやリンドウなどが咲くという。秋から冬には富士山から雪の南アルプスまで望めるそうだ。

裏砂漠展望地で噴煙上がる三宅島を望み、天空の丘で伊豆諸島北部の島々を眺める。大トリは天上山頂上。海と島と山、360度遮るもののない展望を楽しもう。ここから左側、不入ガ沢の崩落地に気をつけ、白島コースを下る。前浜集落まで1時間もかからない。

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(共同通信編集委員・小沢剛)

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日本百低山 日本山岳ガイド協会編

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