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感性を育てる (1)野生の勘。動物としての体感覚に耳を澄ませる │ 雨でも晴れでも「繊細さん」#3


「仲の良い人を3人思い浮かべてください。友達でもパートナーでもかまいません。その人たちのいいところって、それぞれどんなところですか」

カウンセリングで相談者さんの可能性を探るとき、そんな質問をすることがあります。


仲の良い人たちの「いい部分」って、その人自身も持っている可能性が高いのです。

「友人は穏やかでよく話を聞いてくれる」という人は、その人自身もそういう面がありますし、「学生時代の部活の友人が変わった人たちで、一緒にいてラクだった」という人は、その人自身もユニークな一面があります。

ここまでは「たしかにそうかも」と思われるかもしれませんね。今回お伝えしたいのは、そこから一歩踏み込んで、

『友人たちが共通して持っているいいところで、自分にないものがあれば、それはこれから開花する可能性がある』

ということなんです。
私はこの視点を、自分の可能性を広げたいときに使っています。

ご自身でやるときは、1〜4をやってみてくださいね。
1.仲の良い人を3人挙げる
2.それぞれの人のいいところを書き出す
3.3人の共通点にマルをつける
4.3人にあって、自分にないものはどれ?

もう何年も前のことですが、友人やパートナーの良いところを挙げていくと、「体感覚(たいかんかく)に優れている」という共通点がありました。

友人は「嘘をついている人の声はキンキンしてる」と音への体感覚があるそうですし、夫のつりーさんは「仕事で複数の案件がきたとき、どれを引き受けるといいかは体でわかる。体が『なんかこれ』ってなる」といいます。


私は頭で考えるばかりで体感覚の存在すら知らなかったので「体でわかるってどういうこと?」と疑問だったのですが、仲のいい3人がみな体感覚に優れていたので、

「友人たちに体感覚があるなら、こりゃ、私にもあるんだろうな。今は全然わからないけど……」

と漠然と思っていました。


するとその後、カウンセリング中にこんな出来事がありました。
相談者さんが「○○の仕事もいいかなって思うんですよね」とお話しなさっているとき、みぞおちあたりに「うっ」と気持ち悪さを感じたのです。

体調が悪いんだろうか。あるいは私自身のトラウマが反応しているのか。それとも偶然? 気のせい?

そんなことが何件もあり、どんなときにみぞおちに違和感が出るのか、そのときの自分の体調はどうか、カウンセリングがどう進むかなどを数ヶ月観察しました。

するとどうやら、相談者さんが本心とはちがうことをおっしゃると、かすかに気持ち悪くなるようなのです。

「へぇぇ、これが体感覚というものか!」と体で学び、それ以降、カウンセリングでも活用するようになりました。

カウンセリングでは、相談者さんが「こうしたい」とおっしゃっていても、それが本音ではない(本人も気づいていない)ことがしばしばあります。
その言葉を額面通りに受け止めて話を進めるのは、迷路の道を間違うようなもの。

話が空転したり膠着(こうちゃく)したりして、「なんかおかしいぞ。先に進めない」となります。
間違ったポイントまで引き返すことになるのですが、そんなことをしていると時間も回数もかかってしまいます。

体感覚を使えるようになったことで「この扉はダミーだ」とわかるようになり、むやみにカウンセリングの時間を消費することなく、話の本質へ行き着けるようになりました。

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その他、「今これを言うとまずいことになる」というのも体感覚でわかるようになりました。

カウンセラーとして駆け出しの頃、ご相談を受けていて、相談者さんの態度を指摘したほうがいいのか迷ったことがありました。

「耳に痛いことだから、まわりの人は言ってあげないんじゃないか。いま私が指摘しないと、この人はずっと困り続けるのでは」と考えたのです。

でも、言おうとすると、胃が冷たくなる感じがする。なんだか言いたくないなぁ……と気が重い。


言いにくいというのは、「言っちゃダメだ」と体が反応しているということなんですね。その体感覚を無視して伝えると、うまくいかなかったです。

相手が心を閉ざしてしまい、こちらの言葉が届かなくなってしまう。

どんなに見立てが合っていると思っても間違うことがありますし、「たとえその通りだとしても、それを言ってはいけない」ということもあります。
心の整理が進んだ後なら届くだろうけど、今の段階では心理的に受け取れないことも。


体感覚がNOだと言っているときは、その回では伝えるのを控えたり、どうしても必要なときはよくよく言葉を練ってからお伝えするようになりました。

これはなにも「自分や相手にとって都合の悪いことは指摘しない」という意味ではありません。核心に迫る内容でも、体感覚としてスッと言えてしまうのであれば、およそ言っても大丈夫。むしろ相手の中で、面談の時間が終わってもじりじりとカウンセリングが進み続けるような、触媒のような言葉になります。


体感覚がわかるようになって、日頃の会話もぐんとラクになりました。

家族との会話も、子どもの保育園の先生たちとの雑談も、「何を話そう?」「これを言ってもいいのかな」と迷ったら、頭で考えるよりも先に体感覚を確認します。
言いにくい感じがすれば言わないし、特に何もひっかからなければ言ってみる。

家族に対しては、つい言い過ぎてしまい、つりーさんをムッとさせてしまうことがあったのですが、体感をキャッチして「これ以上は言っちゃダメ」という感覚を守るようになってからは、言い過ぎることも減りました。


目の前にいる相手に、今このタイミングで、私がそれを言っていいのかどうか。

体感覚による判断は、頭で考えるよりもずっと正確で、ずっと速いです。

体感覚は、「こちらに言う準備ができていて、かつ、相手が受け取る準備ができているか」ということを、動物的な野生の感覚として教えてくれているのだと思います。

◇次回は、あさって28日(水)公開予定です!◇

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武田友紀『雨でも晴れでも「繊細さん」』

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