野菜の皮は捨てない、冷蔵庫に頼らない…暮らしを豊かにする「ばぁば」の知恵 #3 のんきに生きる
NHKの長寿番組「きょうの料理」に40年以上にわたって出演し続け、「ばぁば」の愛称で親しまれてきた料理研究家の鈴木登紀子さん。2020年12月、96歳で永眠された登紀子さんですが、そのわずか3年前に出版されたのが、こちらの著書『のんきに生きる』です。まさに登紀子さんの「最後のメッセージ」ともいえる本書。内容の一部を抜粋してご紹介します。
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食べられるところを捨てないで
野菜の皮を捨ててしまうのはもったいないと思います。野菜の皮は高い栄養価を含んでいるものも多いですし、生ごみを減らす観点からも、工夫してなるべく皮も使いたいものです。
たとえば大根。ふろふき大根やおでんに入れて煮る場合も、大根おろしを作る際も、皮をむくのが基本です。大根1本、皮をむいたら、かなりの量になります。
それを助手さんたちが捨てようとすると、
「ちょっと待って! そういうものは捨てられないわよ」
と声をかけます。
大根の皮はさっとせん切りにして、ザルに入れて風干ししておきます。すると余分な水分が抜けて、うまみが凝縮されます。あえて名前をつけるなら、生干し大根とでも言えばいいでしょうか。
これを晩ご飯のとき、ごま油で炒めてちょっとおしょうゆを垂らしただけで、おいしい一品ができあがります。そのちょっとした手間を、惜しまないでいただきたいのです。
大根は葉もおいしいですし、何よりビタミンの宝庫。捨てる手はありません。
葉つきの大根を買ったら、葉のやわらかいところをさっとゆでて、きざんでごま油で炒めておしょうゆを垂らしたら、ご飯のおともにぴったりです。
ゆでてきざんだ葉を、炊きたてのご飯と混ぜた菜飯もおいしいですし、おみそ汁や煮ものの青みとしても重宝します。
にんじんや大根、かぶなどの皮を適当な大きさに切り、昆布と甘酢と一緒に漬けておく和風ピクルスもおすすめです。焼きものの前盛りとしても使えますし、ちょっとした箸休めの副菜にもなります。ぜひ、試してくださいませ。
なんでもかんでも冷凍しない
最近は便利な台所用品が増え、昔に比べると料理がとても楽になりました。でも、何もかも道具に頼らず、昔の知恵も多少取り入れてみてはいかがでしょうか。
私が子どもの頃は、まだ冷蔵庫がない時代。台所の床下に大きな木箱が埋めてあり、そこに藁をしいて、新聞紙にくるんで野菜を保存していました。
実は、新聞紙にくるむというのは、野菜が長く持つ保存法なのです。ですからマンション暮らしの頃も、冬はねぎや白菜は新聞紙3枚ほどでぐるぐる巻きにして段ボールに入れ、ベランダに出していました。
こうしておくと風が直に当たらず、それでいて冷たい空気は伝わるので、かなりの間シャキッとしたまま、元気でいてくれるのです。
冷蔵庫に入れると、むしろ乾燥が進み、みずみずしさや微妙なうまみが失われがちになります。
もっとも最近の冷蔵庫は性能がよくなり、野菜のみずみずしさが保てる機種もあるようですが、必ずしも冷蔵庫に頼る必要はない、ということも覚えておいてもらいたいと思います。
たとえばお肉や魚は、よっぽど上手に解凍しないと、味が落ちたり、解凍時に水分が出て水っぽくなってしまいます。
生の魚や鶏のささ身などは、お酒と塩、あるいはお酒とおしょうゆをふって冷蔵庫に入れておけば、2日ほどは充分にもちます。
そういう昔ながらの保存法も、知っておいていただければと思います。
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