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才能の正体 1┃坪田信貴

「才能」って、生まれつき持っていなかったら、手に入らないものなのか?

「才能」という言葉の意味を、分析してみた

 あなたは「才能」って何だと思いますか?

 才能という言葉は、わりと使いやすい言葉です。「才能があれば良かった」「もともと才能に恵まれている」「才能を伸ばしたい」「やっぱり才能がない」……。

 うまくいったときも、うまくいかないときも。急に成績が伸びたときも、赤点を取ったときも。自分の子どもに期待をかけるときも、人が成功して羨ましいときも。失敗を悔やむときも、新しい試みに向かうときも。スポーツ観戦しているときも、音楽を聴いているときも、絵を描いているときも、料理をしているときも。思い返してみると、なかなか使う頻度の高い言葉ではないでしょうか。

 才能という言葉について説明してください、と言われたら、「持って生まれた、すぐれた能力」といったニュアンスになる人が多いのかなと思います。

 実際に『日本国語大辞典』を引いてみたところ「生まれつきの能力。また、その働きのすぐれていること。才幹。」と書いてありました。

 一方、『大辞林』を引いてみたところ「物事をうまくなしとげるすぐれた能力。技術・学問・芸能などについての素質や能力。」とありました。「素質」というのは生まれつき備わっている性質のことですから、やっぱり「才能」は生まれつきのものなのか、と思うでしょうか。

 結局、多くの人は「やっぱり才能って、生まれたときに決まってるんじゃないか」「結局、最初から才能を持っていなければ無理ってことでしょ」と言いたくなるでしょう。

 しかし、その考え方は半分正しいですが、半分間違っています。今すぐその考えをなくした方が、人生がぐっと楽しく明るくなるので、ぜひ、僕の話を聞いてください。

 なぜ、僕がこう断言するのか、ご説明しましょう。

 才能とは、生まれつきの能力だ。この一文に違和感を覚える人はいないと思います。その通りだ、という声も聞こえてきそうです。しかし正確に言うと、「才能=能力」ではありません。

「能力」というのは、コツコツと努力を続けられれば、誰でも身につけることができます。

 この「能力」が高まっていくと、人よりも飛び出たり、尖ったりする部分が出てきて、やがてそこが「才能」として認められるようになるのです。

 もう少し辞書に頼ってみましょう。

「才」という字は、『新漢語林』によると「草木の芽」という意味を持つ漢字だとあります。また『大辞林』によると、「角」と同語源だとあります。つまり「飛び出てきた、尖った」という意味合いを持つ文字なのです。

 ということは、能力の飛び出た部分が「才能」であり、天が与えた、飛び出た部分がある人が「天才」、ということになりますね。

 そうそう、最後にもうひとつ。『広辞苑』で「才能」を引いてみると「才知と能力。ある個人の一定の素質、または訓練によって得られた能力。」とありました。僕は、この解釈が好きです。なぜなら……その理由は、本書を読んでもらえれば、わかっていただけるはずです。

 ちなみに、「才能」って言葉、辞書によって表現がかなり違っていて面白いです。よろしければ、いろいろ調べてみてください。

大きな勘違いによって、僕は「才能」の本質を知りたくなった

 これはもう本当にお恥ずかしい話なんですが、僕は子どもの頃、自分のことを天才だと思っていました。周りからも「天才だ」とか「この子は神童だ」とか言われ、すっかりそうだと思い込んでいたんですね。実際に勉強はできる方だったので、調子に乗っていたところもありました。

 ティーンエイジャーになっても「自分は天才だ」と調子に乗っていた僕を見かねたのか、母が、ある日僕を呼び出して、「あんた、知らんかもしれんけど、ちょっと言っとくわ」と、衝撃的な話をしてくれたのです。それは、僕が幼稚園生のときに受けたIQテストのことでした。

 ちなみに、僕の実家は、九州の田舎で幼稚園(現在はこども園)をやっています。そこで今も働いてくれている、ヒサエ先生という方がいらっしゃって、僕も幼稚園のときにお世話になっていました。母によると、当時、僕はIQテストを受けたそうなのですが、その点数があまりにも悪かったので、僕の担任であったヒサエ先生は「信貴くんがそんなはずはない」と心配になり、まったく同じテストをもう一回受けさせたのだとか。

そうしたら2回目は、普通レベルよりも少し上、くらいの結果が出た。「何かの間違いだったんだな。良かった良かった」と、その結果を提出した……という話でした。しかし、一度やったテスト問題の2回目ですから、いい点が出て当たり前。そもそも〝初見〟でやらないと意味がないテストです。

 母は、僕のことを、〝才能〟という意味では、他の人より圧倒的に劣っているんじゃないかと思っていたので、調子に乗っている僕に、戒めのつもりで話してくれたのだと思います。

 ところが、そのとき高校生になっていた「自称天才」の僕としては、「ええ!? 今になってそんなこと言う?」です。それはもう、心をバキバキに折られました……。

 しばらくは落ち込んでいたのですが、ある日ふと思い直しました。

 だったら、今まで僕のことを、周りの人が天才とか神童とか言ってたのって、何だったんだろう? と。

 IQ(=多くの人が『才能』を数値化できると思っている指標)なんて、実際には才能と関係ないんじゃないか? と思い始め、であれば、才能って、どういうものなんだろう? と考えるようになったきっかけが、これだったのでした。

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