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人体への悪影響がないのに、なぜ大麻は「違法」なのか?

神の草・大麻で宇宙空間を体験、インドのビーチでLSDを一服、キノコの精霊と会話を交わす……。ノンフィクション作家、長吉秀夫さんの『不思議旅行案内 マリファナ・ミステリー・ツアー』は、自身の神秘体験を赤裸々につづったトリップ・エッセイ。ドラッグのみならず、音楽、舞踊、錬金術など、あらゆる神秘の核心に迫っています。知的好奇心が思わずうずく、本書の一部を抜粋してお届けします。

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人体への悪影響はない

僕は、大麻が禁止されていることに、疑問を感じている。

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麻は、有史以来人類とともに歩んで来た僕達にもっとも近い植物であるのにもかかわらず、現在多くの国で、その使用を禁止あるいは制限されている。しかも、麻への弾圧の歴史は百年にも満たないのだ。

確かにアヘンなどに代表される薬物は、人体に対しての影響から、その使用が制限されている経緯は理解できる。しかし麻(大麻)は、人体への悪影響がないことが、先進国における科学的な検証によって確認されている。にもかかわらず、依然として我が国を含む米国文化圏においては、ヒステリックとも感じるくらいに、厳しい取り締まりの対象となっているのだ。

人体への悪影響についての疑問は、科学的な検証を見ずとも、その歴史を見れば明らかである。

例えば、インドやジャマイカでは、長い年月、多くの人間が大麻を吸引している。にもかかわらず、大麻の吸引が原因で死亡した例や疾患を起こした例は、存在していないのだ

それでは、精神的な作用による取り締まりについてはどうなのだろう。覚醒剤やコカインは、その強い依存性によって人を傷つけたりすることが多い。しかし麻は、穏やかな平和的な幸福感を生み出し、依存性もない

大麻を知ることにより、より強い麻薬に手を出してしまうという「踏み石理論」をいう考えもあるが、それはアルコールやタバコにもあてはまることであり、そのことが原因で麻薬常用者になってしまうという説は、説得力に欠ける。

覚醒剤などの強い依存症が引き起こす傷害事件や経済事件は、たしかに犯罪であろう。また、それを服用することで、精神障害を引き起こすような物質は、取り扱いが規制されることもわかる。

しかし大麻については、そのような状態を引き起こすという歴史的な事実も科学的なデータも、存在していないのである

また、服用することによる自動車事故などの懸念には、道路交通法というものが存在しており、アルコールとともに扱えば、事が足りることであろう。

現在、表向きに大麻が禁止されているこれらの要因は、すべて説得力に欠けるのである。

国家にとっての不都合な真実

それでは、大麻などによる意識変革作用そのものは、はたして犯罪と呼べるものなのだろうか。

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もしも、意識変革作用自体が犯罪なのであれば、例えばコンサートに参加して高揚したり、恋愛したり、素晴らしい本と出会って感銘を受けたりすることも立派な犯罪である。しかし、意識変革作用は、人間の内面世界を広げ、個人の成長を促すものである。それは、人間が人間であること、そのものといえる。

大麻を吸引すると多幸感が生まれ、五感のすべてが敏感になる。物事をクリアに見る感覚が生まれ、宇宙の中にいる自分という存在を、リアルに受け入れることができる。創造力が湧き、理不尽な利害関係や心の淀みなどを、一目瞭然に知ることができるのだ。

このような意識の変革は、犯罪なのであろうか。もしも、アメリカ連邦政府や日本政府が大麻を取り締まる理由が、このような意識変革にあるのならば、とんでもないことである。それは政府が、精神をコントロールすることによる「国体保持」を目的とした「全体主義国家」の概念を主張していることとイコールなのではないだろうか。

ラスタ・マン達はガンジャ(大麻)の吸引とレゲエ・ミュージックの中から、そのことを悟っていった。彼らは、キングストンやマンハッタンや東京を、旧約聖書の中に登場する悪徳都市になぞらえて「バビロン」と呼んでいる。

ラスタ・マン達はわかっているのだろう。現代国家や社会権力の根底には、前近代的な全体主義的思想が存在していることを。そして、このことは日本に住む僕達にも、十分わかっていることなのだ。


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