見出し画像

#5 人生を変えたければリビングから「テレビ」を追放しよう

コロナ禍で、ますます新しい働き方が求められるようになった昨今。中でもシビアな立場なのが、もはや若手でもなく、かといって「逃げ切れる世代」でもない30代だろう。リクルートフェロー、杉並区立和田中学校校長などを歴任した藤原和博さんの『35歳の教科書』は、そんな悩める中堅ビジネスパーソンのための「戦略的な人生計画の書」だ。どう働き、どう生きるか? お金と時間をどう使うべきか? 心が奮い立つメッセージをお届けします。

*   *   *

食事は「会話」を楽しむ時間

みなさんは毎日、どれくらいの時間テレビを観ていますか

画像2

どんな時に、どんな番組を選んでいるでしょうか

仕事から帰ってきて、ネクタイをほどくと同時にテレビのリモコンに手を伸ばす。あるいは家族の誰かがすでに番組を観ている状態が普通かもしれません。

画面に映っているのは、お笑い芸人がはしゃぎまわるバラエティ番組かもしれない。

コメンテーターが神妙な面持ちで事件を解説するニュースショーかもしれない。

あなたは用意された食事を口に運びながら、無言でモニターを眺める。そんな光景が容易に想像できるくらい、テレビは私たちの生活にしっかりと組み込まれています

実は私自身はテレビ世代の申し子で、幼い頃からテレビが大好きでした。結婚する前は朝起きるとまずテレビをつけ、たまに夜の10時前に帰ることがあると、テレビを観ながらスナックをパクついていました。

そんな私がテレビと距離を置くようになったのは、子供が生まれて長男が喋るようになってからです。妻は「食事の時はテレビをつけない」家庭で育った人で、彼女が

「これからはみんなでお話ししながら食事をいただきましょう」

と提案したのがきっかけでした。妻の実家は家族全員で食卓を囲み、その日あったことなどをワイワイ話し合うのが普通だったようですが、一人っ子でテレビっ子だった私にとっては、まさに驚異でした。

「自宅での朝食や夕食は、お客さんや会社の同僚と食事をする時と同じように、家族で会話するためにあったのか!」

それは、大発見だったのです。

それから数年して、私たち家族は2年半ほどヨーロッパで生活することになりました。この時、フランスやイギリスの中産階級の家庭のリビングにテレビがないことに気づいたのです。

尋ねてみると「テレビは夫婦の寝室にある」と言います。テレビは基本的に朝起きた時と夜半、夫婦だけの時間にニュースや映画を観るためのものであり、時に夕食に友人を招いた際には、子供をテレビの前に置いておとなしくさせるために使う道具。お客様を接待する場所にあるのは不自然だ、というわけです。

もっとはっきり言えば「リビングにテレビがあるのは、会話を楽しむだけの教養がない証拠」というイメージを持っているようです。

帰国した私はリビングのテレビを観ながら考えました。

「テレビに素晴らしい番組はたくさんある。でも、このままだと我が家の主人はテレビになってしまいそうだ。苦しい選択だけど、ここはひとつ心を決めて、テレビを居間から動かそう」

実際になくなってみると、拍子抜けするくらい何の不自由も感じませんでした。逆にリビングが広く使え、家族との会話が増え、食事が楽しくなった。いいこと尽くめです。

新聞を取るのもやめてみる

テレビは一種のドラッグです。中毒になることもある。

画像1

逆説的な言い方になりますが、私は日本でドラッグの氾濫を最近まで抑えることができたのはテレビのおかげだったと考えています。日本はアメリカよりもマリファナやドラッグの使用者が少なかった。その点では「テレビさん、ありがとう」という気持ちもあります。脳の思考を停止させて人々を癒す効果が高いんですね。ただし、子供をテレビで育てることはドラッグ漬けにしていることと大差ありません

中学校ではアンチドラッグ教育を行っています。通常「ドラッグ」といえば「タバコ」「酒」「クスリ」の三つですが、私はここに「ケータイ」と「テレビ」を加えています。決して「ケータイ」や「テレビ」が悪いわけではないのですが、無条件に与えて中毒にするのは好ましくない。大人だって同じです。

ただ、最近のドラッグの蔓延状況を見ていると、テレビの持つ麻酔効果がそろそろ期限切れなのかもしれませんが。

もうひとつ、新聞を読むことについても、一度クリティカルに考えてみるべきだと思います。以前の私は毎朝、日本経済新聞の企業のニュースをチェックしないと気が済みませんでした。読まないと気持ちが悪い。それは一種の強迫観念だったのだと思います。

日本では新聞が「世の中に遅れないための保険」になっているように見えます。買っているのは情報ではなくて、実は安心なのです。多くの人が新聞の論調を、ほとんど無批判に受け入れ、自分の意見のように思い込んでいる。これは大変危険です。

まずは新聞を取るのをやめてみる。読みたい時は、近くのコンビニで買ってくればいいのです。たとえそれが毎日であったとしても、自分から能動的に行動して「買う」という行為があるだけで、無条件の反復を避けることができます。

まずはテレビをリビングからどけてみる。そして新聞を取るのをやめる

この二つを実行することで、生活はかなり変化すると思います。

情報に振り回されなくなるし、論説委員やコメンテーターの言説を自分の意見であるかのように勘違いすることもなくなるでしょう。





みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!