見出し画像

「鈍足」だった岡崎慎司を変えた「脱ガムシャラ」トレーニング #1 鈍足バンザイ!

足が遅い。背が低い。テクニックもない。そんな彼が、いかにして日本を代表するストライカーになりえたのか……。昨シーズン限りでスペインのウエスカを退団し、その去就が注目されている岡崎慎司。著書『鈍足バンザイ! 僕は足が遅かったからこそ、今がある。』は、自信が持てないとき、コンプレックスに悩んでいるとき、あなたの背中をそっと押してくれる一冊です。サッカー好きなら必読の本書、ぜひお楽しみください。

*  *  *

「鈍足」を自覚した高校時代

小学生のころは、かろうじてリレーの選手に選ばれることもあった。どちらかと言えば、足が平均より少し速いくらいの位置づけだったと思う。ところが、中学校、高校と進んでいくうちに、立場は変わっていった。

画像1

「あれ、おかしいな」

初めのうちは、違和感を覚えるくらいだった。だが、学年が進むにつれて、それまで僕より足の遅かったヤツと同じくらいになり、同じくらいの速さのヤツと一緒に走ると僕は置いていかれるようになってしまった。

「これ、ヤバいな?」

高校生のときには鈍足を認めざるを得なくなった

僕なりに足を速くしようと努力はしていた。20mを1人で全力疾走する。これを何百回も繰り返したけれど、一向に速く走れるようにはならない。高校生の考えることなんて、たかが知れていた。

そんな状態のままプロになった僕は、清水エスパルスの最初の練習で驚かされたことがある。走るメニューが中心のフィジカルトレーニングを始める前に、その意味と効果を丁寧に説明してくれたのだ。そんな人、それまでいなかった。だから、あのときの杉本龍勇さんの言葉を今でもよく覚えている。

これから限界を取っ払うぞ。オマエたちは、速くなれる!

マンガの熱血コーチのようなセリフだった。

自己流の努力では成果を得られなかった僕は、この一言に震えた。実際、龍勇さんの説明を聞けば聞くほど、僕の考えていた単純な20mのダッシュは意味のないものだと思い知らされた。龍勇さんに言わせれば、それまでの僕は地面にバタバタと足をつけていて、みっともない走り方をしていたそうだ。

例えば、速く走ろうと思ったときに普通はどう考えるでしょうか? 太ももを高く上げて、足を素早く回転させようと考えますよね。もちろんこれは大事なこと。でも、龍勇さんの指導は、足を地面につけたときの反動を活かすことで自然と足が前に行き、スピードが上がるという考え方なのです。

ただ頑張るだけでは進歩はない

プロとして過ごした最初のシーズンの終わりに、龍勇さんには個人的に声をかけてもらった。

「もっと足を速くさせてやるよ」

画像2

その言葉に僕は飛びついて、シーズンオフの期間に浜松大学の陸上部の練習に足を運び、指導を受けるようになった。それは翌年以降も続いた。

そうやって龍勇さんの理論に従っていくうちに、僕のカラダのパフォーマンスも進化していった。前の項でも触れたように、足がものすごく速くなったわけではない。ただ、運動神経は良くなっていった。結果、それまでよりも長い距離を走れるようになったし、何より疲れにくくなった。それに加えて、最初の一歩を素早く、遠くまで踏み出せるようにもなった。

例えば、僕は相手のディフェンダーを置き去りにして、ゴールキーパーと1対1の場面を作ることが多い。ものすごく足が速い選手ならともかく、僕が相手のディフェンダーの選手たちを置き去りに出来る理由のひとつは、最初の一歩を上手く踏み出せるから。

ただ、龍勇さんと出会って変わったのは、カラダの使い方だけではない。ガムシャラに何かに取り組むだけではダメだと思えるようになったことも大きな発見だった。

もし、龍勇さんと出会っていなければ、僕は今でもガムシャラに20m走を繰り返していただけかもしれない。それでは足が速くなることもなく、走るスピード以外の部分を今の自分のように磨くことも出来なかったはずだ。

ガムシャラに頑張っているだけでは一向に前に進まないぞ。何をすべきかを考え、その上で必死になって取り組むんだ!

龍勇さんに言われたことは、今も心に刻んでいる。

僕は周りのことが見えなくなるタイプだから、ガムシャラに何かに取り組むのは得意なほうだ。ただ、全力を注ぐ前に、正しい方法、方向を見極めないといけない。それを教えてくれたのが龍勇さんだった。

◇  ◇  ◇

連載一覧はこちら↓
鈍足バンザイ! 僕は足が遅かったからこそ、今がある。 岡崎慎司

画像3


紙書籍はこちらから

電子書籍はこちらから