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西野泰正、伊東輝悦、佐藤由紀彦…岡崎慎司が先輩たちから教わったこと #5 鈍足バンザイ!

足が遅い。背が低い。テクニックもない。そんな彼が、いかにして日本を代表するストライカーになりえたのか……。昨シーズン限りでスペインのウエスカを退団し、その去就が注目されている岡崎慎司。著書『鈍足バンザイ! 僕は足が遅かったからこそ、今がある。』は、自信が持てないとき、コンプレックスに悩んでいるとき、あなたの背中をそっと押してくれる一冊です。サッカー好きなら必読の本書、ぜひお楽しみください。

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トップ選手の意外な練習法

僕がプロに入った2005年、シーズンの途中にジュビロ磐田から移籍してきたのが西野泰正さんだ。西野さんと一緒にプレーしたのはわずか半年。それでも、ジュビロの黄金期を知る先輩から学ぶことはとても多かった。

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西野さんの練習を見て、驚いたことがある。居残りでシュート練習をするとき、西野さんは赤いコーンを用意した。そして、それをペナルティエリア内にいくつか立てた上で、シュート練習を始めたのだ。

「何しているんですか?」

「試合のことを、想定しているんだよ!」

「えっ……」

すぐに理解出来ない僕に、西野さんは優しく教えてくれた。試合では、フリーでシュートを打てる場面など滅多にない。ディフェンダーが周りにいることがほとんどだ。赤いコーンはディフェンダーをイメージして用意したものだった

「Jリーグのトップ選手は、そんなところまで意識しているのか」

ハッとさせられた。

それ以降は、自分に強く言い聞かせ続けた。センタリングからヘディングをするときにも、常にディフェンダーがいるイメージをしながら取り組むようになった。

エスパルスで18年間もプレーしていた伊東輝悦さんは、チームの練習が終わるといつも黙々とグラウンドを走っていた。2014年には、プロとして22年目のシーズンをJ3のAC長野パルセイロでスタートさせた。輝さんは、寡黙なタイプ。黙々と走る背中を見ながら、長く現役でプレーするためには何が必要なのかを教えていただいた気がした。

チーム練習のあとに、ランニングをしながら、その日の練習ですべてやりきったかを振り返ってみる。明日の練習で取り組むべきことは何かを整理する。そうやって、練習で追い込んだカラダをゆっくりと休ませていく。

僕がいまだに練習が終わったあとにグラウンドを走るのは、プロとして心がけるべきことを輝さんに教わったからなのかもしれない。2014年には韓国代表のク・ジャチョルがマインツに加わり、練習のあとに彼やチュホと一緒にグラウンドを走るのが僕の日課となっている。

先輩は自分にとっての「教科書」

佐藤由紀彦さんは、プロとしてどんなキャリアを作っていけばいいのかを教えてくれた。

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ユキさんは、これまで7つのクラブでプレーしてきた。しかも、J1、J2、JFLとレベルの異なる3つのリーグを経験している。僕は現役を終えるまでヨーロッパでプレーしたいと思うときもあれば、元気なうちに日本に戻って恩返しをしたいと思うときもある。だから、ユキさんにはよく質問する。

「言い方は悪いですけど、下のカテゴリーのリーグに行って、大変だと思うときはないんですか?

そんなことを聞いたこともある。

「しんどいこともあるよ」と返してくれたこともあれば、「監督が変わって、自分のプレーを評価してくれる。それが嬉しいんだ」と熱を込めて語ってくれたこともあった。

そうやってユキさんの話を聞いて初めて、僕は将来のことをイメージ出来るようになる。

僕は、細かく未来を想像して動くタイプではない。想像力も足りない。そんな僕が前に進むための教科書となってくれるのが、人生の先輩たちだ。

先輩といると、楽だなぁと感じることもある。でも、僕が先輩にシッポを振ってついていくのは、先輩たちが自分には出来ない経験をしているからなのだと思う。先生のように。

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鈍足バンザイ! 僕は足が遅かったからこそ、今がある。 岡崎慎司

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