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「入院」初日に行なわれる「ミテ肛門」という屈辱! #1 少年院で、大志を抱け
19歳のボクは、暴走行為と覚せい剤使用で逮捕され、少年院へ。そこは軍隊並みの規則と訓練が課せられる、オソロシイ世界だった……。吉永拓哉さんの著書『少年院で、大志を抱け』は、「刑務所より厳しい」と言われる少年院での体験をつづったリアル・ノンフィクション。次々と飛び出す「シャバ」では考えられないエピソードに、きっとみなさんも驚くでしょう。その中身を少しだけ、ご紹介します。
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「入院」してまずやることは?
“入園の心得”を身をもって教え込まれたボクは、野中君ら本日入院のメンバーとともに、庁舎1階にある単独寮の教官室へと連れて行かれ、新入時教育担当の先生にあいさつをした。
この先生は、顔がどことなくムツゴロウさんに似ている。パッと見では、用務員のオッサンに間違えられそうな風格があり、いかにも「強い者には弱く、弱い者には強い」といった、お役人風な雰囲気が漂う人だった。
ムツゴロウ先生にボクら4人が「よろしくお願いします」とあいさつしたところ、また面倒なヤツらが来たといった顔をしながら「おまえらは今から坊主じゃ!!」と怒鳴られた。初めての会話からこの調子だから、先が思いやられる。
順番にポリバケツに頭を突っ込むと、先生はバリカンを手にして、床屋顔負けの腕前を披露した。その姿はまるで本物のムツゴロウさんが羊の毛でも刈っているかのようだった。ボクの目まで届くほど長かった髪が見事なバリカンさばきでバサバサと落ちてバケツの中にたまっていった。
すでに逮捕されてから1ヶ月近くが経っているので、細くしていたまゆ毛もほとんど生え揃っていた。さらにクリクリ坊主にされたわけだから、もはやヤンキーの姿はそこになく、入りたての野球部員のように変わり果ててしまった。
それからムツゴロウ先生の指示で、着ていた洋服を4人それぞれに用意された箱の中に入れた。これは仮退院するまでの間、少年院が保管することになっている。
全裸になったボクらは、恥ずかしそうな顔をして我が息子を両手で隠し、青白い頭をテカらせながら、そそくさとムツゴロウ先生のあとをついて行った。そして、各自が入る単独室の扉の前に立たされて先生の方を向いた。
「きをつけえい!」スネ夫が年食ったようなインチキくさい声の号令が掛かると、4人は一応背筋をピンッと張った。ボクは、可愛らし過ぎる我がジュニアを、赤の他人にお見せしたくはなかったのだが、しかたなしに両手をどかして「きをつけ」の姿勢をとった。
名物、塀の中の「カンカン踊り」
次にムツゴロウ先生は、順番に身体検査をし、終わった人から単独室の中へと押し入れた。ボクの順番になり「ほら、バンザイしてぐるっと回ってみろ」と言うので、その通りにやってみせ、最後に秘密の場所に何か隠していないかを検査する“ミテ肛門”をさせられた。
これが通称塀の中の“カンカン踊り”というヤツである。こんなこっ恥ずかしい行為は、ファッションヘルスの中ぐらいでしかやったことがない。そしてムツゴロウ先生にお見せしても興奮するはずがない。
「なんも持っとらんか」いちいち声を張り上げる。
「はい、何も持ってません」と答え、単独室へ入る前に「はいりまぁす!」とお決まりのあいさつをした。
単独室は、部屋の広さは3畳ほどで、一体式の勉強机とイス、引き出し付きベッド、便器、洗面台と、歯ブラシを置くための棚、帽子掛けなどが初めから備え付けられている。なお、鑑別所と違ってテレビが設置されておらず、それに「まゆ毛を抜くから」という理由で鏡もない。
トイレは囲われておらず、廊下側の覗き窓の前にあり、用を足す時にのみ、窓のカーテンを閉めていいことになっている。部屋の奥には鉄格子と網戸が付いた大きな窓があるが、先生の許可がないと窓のそばに近づくことはできない。
よく見ると、室内にはまったく落書きがされていなかった。先生からあらかじめ渡される“落書き調査用紙”があるためだ。入室したその日に、部屋の中の隅から隅まで落書きがないか確認して、もし見つかれば用紙に記入しなくてはならない。
万が一にでも落書きを見落とせば、あとで自分が書いたものとして責任をかぶせられるので、落書き調査は手抜きができないのである。さすがのボクでも、少年院の中で落書きするほど太い肝は持ち合わせていなかった。
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