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独立して成功する人は「古巣から仕事をもらわない」

転職、独立、起業、セミリタイア……。終身雇用、年功序列が崩壊しつつある今、「会社を辞める」という選択は珍しいものではなくなっています。しかしリスクばかり考えて、あと一歩踏み出せない人も多いはず。そんな人の背中を押してくれるのが、自身も26年間勤めた銀行を辞め、作家に転身した江上剛さんの『会社を辞めるのは怖くない』です。本書の中から、新しい人生を送るための準備と心がまえをいくつかご紹介しましょう。

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自分を「背水の陣」に追い込む


どんな会社であれ、永遠にその会社に勤務し続けられる社員はいません。いずれ、そこを巣立っていくしかないのです。

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          (写真:iStock.com/Moostocker)
そんな時期が近づいてくるのをそろそろ自覚し始める頃、それなりに上のポジションまで昇りつめた人は、「棚ぼた式に、関連会社の社長になれたらいいんだが」とか、「でも、いい話が来れば、独立して自分で仕事を始めてみてもいいかな」などと心が揺れることでしょう。しかし、そんな天秤にかけるような中途半端な姿勢では駄目です

新聞記者として活躍し、社が発行する雑誌の編集長などの要職を歴任した知人からこんな話を聞きました。いずれ迎える退職について、早くから決めていたことがあった。次の道を選択する段になったら、自分が勤めてきた新聞社関連の仕事は一切しないで、きれいに辞めよう、と。

大手の新聞社でしたから、子会社はたくさんあります。世話になろうと思えば、きっとどこでもいい待遇で迎えてくれたはずです。でも彼には、そういう道を歩む気がまったくありませんでした。独立して自分で事業を始める決意を固めていました。

その際、古巣からは仕事をもらわないという覚悟をしていたのです。これは言うのは容易ですが、なかなかむずかしいことです。なぜ、こんな覚悟を固めたのでしょうか。それは自分に甘えを許さないためだと彼は言いました。まさに背水の陣です。

前々からITに興味を持っていた彼は、記者時代、ウェブ版の記事を書いたり、取材をしたりしながら、ITを利用すれば面白い事業が展開しうるのではないかと考えていました。

定年が来るから何かをしなければならない、という発想ではない。ITの可能性を模索しながら、未来に向けて新しいことができないだろうか、そんな視点を常に持って、記者として仕事をしてきたと言うのです。

「個人力」を磨いておこう


50歳代半ばで新聞社を辞めると、彼は編集プロダクションを設立しました。編プロといえば、出版社の下請けというスタイルがほとんどです。しかし、出版業界は全体的に右肩下がりになってきています。“本”そのものは貴重だけれど、ビジネスとしては、将来、上昇カーブを描くことは難しいだろうと見ていたのです。

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         (写真:iStock.com/metamorworks)
ですから出版社を通して仕事を請けるのではなく、自分の会社に直接仕事が入るようにできないかと考えました。そしていろいろな企業を直接に訪問し、その企業の発行する出版物を直接受注する道を拓きました。

また彼は、編集の業務と同時に、E-Learningというシステムを作って、社員教育のソフトを企業に提供する仕事を始めました。社員はネットを利用して、企業法務やセールスなどについて、自宅で勉強できるというものです。

ある上場企業がそれを彼の会社から導入してくれました。それから順調にニーズが高まってきました。さらに、ジャーナリストの経験を活かして、ウェブによる情報メディアを立ち上げ、日本語、英語、中国語でサイトを出すようになりました。独自の視点が評判を取り、ページビューも多くて、広告も順調に増えています。

アジアの新聞社の幹部たちは、日本で何かをしようと考えた時は、彼に直接相談するようにまでなりました。日本に研修生を送るさいも、朝日や日経などの新聞社に直接アプローチせず、彼に頼んできます。また例えば「日本のIT企業の社長に会いたい」といった依頼もあります。

なぜ、彼は頼りにされるのでしょうか。

それは彼の会社のほうが大手よりスピードがあり、フレキシブルだからです。彼の感度のよさや広い人脈が買われているのです。大手の新聞社にアプローチすると、内部での決裁が終わるまで、なかなか結論を出してくれない場合が多い。また大手の新聞社がウェブによるメディアを発信しても、新聞という重しがあるので、大胆な情報発信にまでは踏み切ることが難しい。しかもさまざまな国のいろんな新聞社と提携している彼の所のほうが、自由で機動性に富んでいるわけです。

彼を見ていて納得したことがあります。それは、会社の組織を離れ、独立して新しい事業を始めるには、“個人力”を磨いておく必要があるということです。


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