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大谷翔平をメジャー成功へと導いた「目標達成シート」のすごい力 #1 プロ野球怪物伝

2020年2月、惜しまれつつ逝去した、日本プロ野球史に燦然と輝く名将・野村克也さん。晩年の著書『プロ野球怪物伝』は、大谷翔平、田中将大などの現役プレイヤーから、イチロー、松井秀喜など平成を彩った名選手、そして王貞治、長嶋茂雄など往年のスターまで、38人の「怪物たち」について語り尽くした一冊。まさに野村さんの「最後のメッセージ」ともいえる貴重な本書より、読みどころをご紹介します。

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まずは「最終目標」を決めよう

まだ日本ハムに在籍していたころのことだが、大谷と言葉を交わしたことがある。とても素直で謙虚。性格もよいという印象を受けた。さぞやモテるだろうに、うわついたところはなく、もっと成長するためにはどうすればいいのか、何が必要なのか、しっかりと考えているようだった。

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当時はまだ二十歳をいくつか過ぎたばかり。そうした謙虚さや向上心はいったいどこからくるものなのか不思議だったが、その理由の一端を窺い知れるものがあった。大谷が高校一年生のときに作成した「目標達成シート」なるものがそれだ。大谷を指導した花巻東高の佐々木洋監督が、選手たちに課したものだという。

これは「マンダラチャート」とも呼ばれ、ビジネスでも用いられるものらしい。9×9の計81マスからなる表の真ん中に最終目標を記入し、その回りの8マスにそのためにすべきこと、必要なことを記入していくというものである。

そのとき大谷が記した最終目標は「ドラ1、8球団」というもの。すなわち、ドラフト1位で8球団から指名を受けるという意味だ(8球団というのは、花巻東高の先輩である菊池雄星が6球団から指名されたことを意識した数字らしい)。

そして、それを達成するために必要な要素として、「コントロール」「キレ」「スピード160キロメートル」「変化球」「運」「人間性」「メンタル」「体づくり」を掲げている。

そのうえで、8つの要素を達成するために必要なことをまた、各要素を囲む8マスのなかに書き込んでいく。

コントロールであれば、「体幹強化」「軸をぶらさない」「不安をなくす」「メンタルコントロールをする」「体を開かない」「下肢の強化」「リリースポイントの安定」「インステップ改善」

スピードならば、「下肢の強化」「体重増加」「肩周りの強化」「ピッチングを増やす」「ライナーキャッチボール」「可動域」「体幹強化」「軸でまわる」

メンタルは、「一喜一憂しない」「頭は冷静に心は熱く」「雰囲気に流されない」「仲間を思いやる心」「勝利への執念」「波をつくらない」「ピンチに強い」「はっきりとした目標・目的をもつ」といった具合だ。

成功は「小事」を積み重ねた先にある

なかでも、ドラフトで8球団に指名されるために必要な項目として「人間性」をあげているのが、私には興味深かった。「人間的成長なくして技術的成長なし」と私は選手たちに言い続けてきたからだ。

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「人間性」を高めるために心がけることとして、大谷は「愛される人間」「計画性」「感謝」「継続力」「礼儀」「思いやり」といった項目をあげている。

また、「運」については、「ゴミ拾い」「部屋そうじ」「審判さんへの態度」「本を読む」「あいさつ」などがあげられているところに、大谷の性格があらわれている気がしないでもない。

「自分はこうなりたい」「これがしたい」

人間が成長するためには、そういう具体的な目標を持つことが非常に大切だ。それがみずから能動的にやるべきことに取り組もうとする意欲の源泉となるからである。

しかし、目標というものは、一朝一夕に辿り着けるものでもない。「目標を達成するためには、どうすればいいのか、何が必要なのか」を徹底的に考え、小さなこと、小事を積み重ねていくことで少しずつ近づいていくものなのである。その過程が潜在能力と可能性を引き出すことになる。「小事が大事を生む」のだ。

大谷は、まさしくそういう道を歩んできたのではないか。小事を積み重ねていった結果、いまの大谷があるのである。

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『プロ野球怪物伝』野村克也

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