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【当面のテーマ】実質金利の上昇が、アセット・バブルにストップをかけるか。

カネ余りが鮮明となり全リスク・アセットが急騰しているが、目下の注目点は最高値を更新し続ける米国株式を、実質金利の上昇が阻むのかであろう。今回極めて話を単純化して要素を見ていきたい。

①実質金利って何?

実質金利とは「名目金利 - 期待インフレ率」のことであるが、一般の方にとっては何のことを言っているか理解不能であろう。

上図が、米国債10年金利の利回りを示しているが、足元では1.30%程度。これが名目金利である。もし、この米10年債を購入すると、投資家は毎年1.30%の利息が貰えることになる。

一方、下図は市場参加者の予想する、米国で発生する今後10年間に亘るインフレ率の(期待)水準である。+2.2%程度で、今後10年間2%を上回る水準のインフレが起きると市場では受け止められている。この水準が「期待インフレ率」と呼ばれている。

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では、投資家にとって、これはどのように解釈できるのだろうか?米国債の年利は+1.3%だけど、毎年+2.2%世の中がインフレする場合、自分の資産(米国債)は1.3%-2.2%=-0.9%目減りするというのが正しい解釈だろう。これが、実質金利の含意である。世の中のアセットは、期待インフレを上回らないと、実質的なリターンはポジティブにならないのである。それでは、次に実質金利の推移を見て行きたい。

下図が実質金利の推移を示すが、何とコロナ・ショック以降、急激に低下し、一時は-1%程度まで下落した。そして、足元ではボトム・アウト反転の兆しを見せている。

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②株価にどう影響与えるの?

端的には、実質金利の低下(上昇)は、株価の上昇(下落)を促す。もし、実質的にネガティブな金利でお金を借りれるならば、企業はどんどんお金を借りて、プラス・リターンのビジネスに投下すれば簡単に収益が可能だ。投資家目線でも、リターンがネガティブな国債などではなく、株式等に資金を振り向けるだろう。

昨年来、米国株式が大きく上昇した背景には、実質金利のネガティブ化、深堀があった。一方、足元では実質金利の底打ち・反転の兆しが見えており、それが株式市場の足かせになる展開が構築されつつあるのが現状である。


③目先の見通しは?

名目金利と期待インフレ率の両方を考える必要がある。

期待インフレ率については、過去20年程度の推移を見ても+0.2%程度は上昇余地があると考えているが(2.4%)、その場合でも、非常にゆっくりとした上昇になるだろう。

一方で、名目金利について、米国での追加財政政策やワクチン普及による経済正常化期待を受け、急速にコロナ前への水準に向けて、上昇する可能性がある。+0.2%(1.5%)、+0.4%(1.7%)と駆け上がる場合には、実質金利も急騰し、株価下落につながる可能性は高いだろう。

しかし、仮に、実質金利の急騰を受けて株価が崩れ下落していく場合には、まずは市場全体がリスクオフとなり、次に安全資産である米国債が買われる(名目金利の低下)展開になると予想される。結果として、再び実質金利は、今とは異なる均衡水準に落ち着き、株価の下落も落ち着きどころを探るだろう。

これは、「実質金利上昇→株価下落→名目金利下落→実質金利低下→株価持ち直し」となる定型的な相場のパターンなので、落ち着いて行動する必要がある。言うなれば、グローバルなマーケットで繰り広げられるプロレスである。重要なのは、今自分が思い描いているプロレスが始まっているのか(いつ始まるのか?)、そしていつ終わるのかである。

マーケットには、個別の銘柄で投資妙味を探す以外にも、マーケットのダイナミズムを利用して収益を上げる手法がある(グローバル・マクロ)。

全ての投資機会に手を出す必要などはない。自分の得意なパターン、勝てそうな時だけ、プロレスに参加すればいいというのが筆者の見解であり、生き残る秘訣であろう。あくまでプロレスなので、本気になりすぎて、予期せぬ大怪我だけはしないように気を付けたい。

今後も長く執筆続けられるように、価値提供できるように頑張りますので、引き続き応援よろしくお願いします。好きやフォローして頂けると、もっと価値のある記事を書く励みになります。

英国紳士



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