Re:逃走癖女神 ㉓新しいうた 連載恋愛小説
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朝、ふたりでゴロゴロしていると、インターホンが鳴った。
「オイ、園田。ウチはラブホじゃねんだわ」
ごぶさたしています、としれっと挨拶する朔久は肝が据わっている。
「都さんがここにいること教えてくださって、ありがとうございました」
「たった今、後悔しとるとこだ」
さすが別荘族のお嬢様。
軽く殺気立ってはいるものの、バゲットを小脇に抱える姿はサマになっていた。
「紗英さん、パリジェンヌかと思ったー。たまには私が持ち上げてみた」
トリセツの流出を察知し、紗英は朔久をにらみつける。
「誤解です。シゲさんでは?」
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バゲットを突然放り投げ「例のあれ、作ってみな」と紗英は命じる。
朔久は、は、と短く応じ、テキパキ動きだした。
「都に本気なら、好物のひとつやふたつ作れんことには話にならん」
頑固オヤジばりに、仁王立ちになる紗英。
甘い香りが漂ってきて、都はうさぎみたいに鼻をひくつかせた。
「うそ。紗英さんのフレンチトースト?おんなじー」
同じなわけあるか、とキレながら、紗英も試食する。
とろふわの、至福の舌ざわり。
隠し味にオレンジジュースを使っているらしく、チョコとの相性がたまらない。心を解きほぐす、オトナのやさしい甘さ。
(つづく)
▷次回、最終話「女神の未来」の巻。
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