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便利屋修行1年生 ⒋浮気調査 連載恋愛小説

どうやら、ここは便利屋と探偵業を兼業しているらしい。
前者は暮らしの困りごとをサポートし、後者は主に調査活動。
探偵っぽい仕事がまわってきたのは、綾が入って1カ月経った頃だった。

ふと気になって、聞いてしまった。
「浮気とかします?」
決定的証拠をつかむため、不倫カップルと同宿を取り、絶賛監視中。
対象者が腕を組んでチェックインすれば、理想的。

ロビーのソファに陣取り、それらしくするため綾は沢口の肩にもたれている。
カメラは目立つのではと思ったが、だれもそんなことに気をとめないらしい。観光地ならなおさらだ。

***

恋人とはほど遠い、冷えきった目をした相棒は、答えそうにない。
さすがに仕事で絡むと無視するにも支障があるからか、このごろ彼は渋々ながらも綾と言葉を交わすようになっていた。
「すみません。集中しろ、ですよね」
「さあ、するかもな。死んでもしたくないけど」

旅先で気分が高揚し、ところかまわずやりかねない。
沢口の予言どおり、ふたりは廊下で抱き合いキスをした。
一歩入れば、すぐそこが客室なのにもかかわらず。

またとないチャンスをのがさず、動画と写真に確実に収める。
動かぬ証拠を押さえると、報酬も倍増するそうだ。
画質をチェックし、不要な箇所は編集する。
終始、冷徹で隙のない仕事ぶり。所作しょさを見るだけでも、勉強になる。

(つづく)


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