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Re:逃走癖女神 ⒕女神の掟 連載恋愛小説
恋多き詩人という都のレッテルを、朔久はどうも信じこんでいる節がある。
ひとたび肌を合わせれば、そんなメッキは簡単にはがれ落ちると思っていたのに。
もうひとつ誤算がある。
耳もとでしゃべらないよう、掟に入れるべきだった。
日常生活ではリラックス効果のあるその声が、ベッドでは真逆の威力を発揮する。理性がコントロールできなくなり、誤作動を起こすのだ。
それでも、勝負に負けることは絶対にないと、都は余裕しゃくしゃくだった。なにせ、好きな人がいたことがないからだ。
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「我らが女神、ミヤコ様のご帰還である。皆の者、ゆめゆめ無礼を働くべからず」
打ち上げというのは、居酒屋でやるものだと思っていた。
だが、住吉重忠率いる制作チームは、一次会からカラオケ店のVIPパーティールームに集合するのが常らしい。
「都せんせ、こっちこっちー」
普通に呼んでくれと何度頼んでも、誰ひとり聞く耳を持たない。
トップがあれでは、しかたがないのかもしれない。
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「いやあ、ヒットしましたな」
「社会現象が巻き起こりましたぞ」
口調もモブキャラめかして、凝り性の人が多い。
半年前、脚本を詰める際にやりあった各部門の責任者たちと、今ではすっかり大の仲良し。
忘れられた天才が仕掛ける、新機軸SFラブ。
そのキャッチコピーは、紗英が考えた。
「忘れちゃってくれてんじゃねーよ」の怨念を込めてみたという。
作者としては、ラブを前面に出した覚えはなかったが。
無機質なまでのスタイリッシュな世界観、たくらみに満ちた密度の高いプロット。ゆたかな人間味を宿すキャラクター造形。
不器用すぎる恋愛模様が刺さると、幅広い世代に響く—
総作画監督が、ネット記事を読み上げてくれる。
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地球を破滅させる能力を秘めた女神カガミは、幼いころから人間界に潜りこまされる。
純真すぎるがゆえ、救いがたい現実に絶望し、狂暴化。
カガミはいわば、時限爆弾の起爆装置。
彼女が二十歳になるまでに改善がみられなければ、人間種は強制終了。
地中にまんべんなく埋められた、高性能核爆弾が作動する。
同時多発的に人工的な火山爆発を引き起こし、地球を業火で焼き尽くす。
何もない溶岩の上に、二百年もすれば森が再生する。
コケ類から草原、低木林へ。
何ごともなかったかのように、自然は美しくよみがえる。
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軍幹部のひとりとして、刹は抹殺対象である美しい女と対峙する。
「許されない恋に落ちるセツも、実は人間じゃなかった、ってのがいいよな」と重忠。
鏡は女神としての自覚を忘れないよう、人間を愛してはならない掟を課されていた。
異性はおろか、育ての親さえも。
混乱した鏡の暴走を止めるため、刹の覚醒はズレるようプログラムされていた。
ふたりは、破壊と救済の一対をなす神だった—
というのが、皆で作り上げた「女神の掟」だ。
(つづく)
▷次回、第15話「もうひとりの女神」の巻。
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