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フマジメ早朝会議 25.恋トレ 連載恋愛小説

「ずっと」を一緒に訓練してみないかと、数仁かずひさは提案する。
ふたりともニガテなようだからと。
変わった人だ。正直すぎて、都合の悪いことも口にする。仕事以外のことには、不器用なのだろうか。

「ずっとなんて、あるわけないじゃん」
うまくいっていても、終わるのがこわくて自分から関係を断ってきた。
家の事情を、恭可は手短に説明する。数仁は「…エピソード強いな」とひとこと。
伝え聞いたところでは、あっちの家庭も不和になりオヤジは支援施設で暮らしているらしい。のたれ死ぬことはなさそうなので、恭可はちょっとほっとしている。

「順番おかしいんですけど」
まずは、釈明するものじゃなかろうか。
「ああ…なんか気づかないというか、悩ませてごめん」
彼の手法はストレート。真麻に電話をかけて、説明させた。

高校時代にふたりがつきあっていたことは、ウソではなかった。
同窓会会場で元カレを質問攻めにしたネイリストの真麻は、彼に気になる人物がいるようだと察知する。しばらくして来店した客と、ことごとく特徴が合致。くやしくなり、魔が差した…と。

「ほんとーにごめんなさい。栗林さんにあまりにも毒がないから、あとでめちゃくちゃ罪悪感で。思わず屋敷くんに白状しちゃってた」
うたぐり深い性悪オンナだからフラれたのに…と彼女の声は沈んでいた。

次にお店に行ったら、めいっぱいサービスしてください、と恭可は彼女を励ます。
別の女性とも家庭を作っていたことを、長年父親に内緒にされていた。そのせいか、この程度のウソなんてかわいく思えてしまう。
いちばん知られたくないであろう数仁に知らせるなんて、やはり彼女の心根は曲がってはいない。

(つづく)
▷次回、第26話「数仁の企業秘密」の巻。


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